水を冷やすと氷になり固まります。氷を温めるととけて水に戻ります。液晶は水のような液体と氷のような固体の中間の性質を示す物質・状態です。液晶は、テレビや携帯電話のディスプレイに使われています。人工物だけではなく自然の中でも液晶は重要な役割を果たしており、こがね虫のキラキラ光る羽も、たんぱく質でできた液晶です。 本実験では、植物や紙の重要な成分であるセルロースを使って、きらきら光る液晶を作ってみましょう。
サンプル瓶にヒドロキシプロピルセルロースを2.0 gはかり取ります。次に、下表を参考にして、自分が目指す色を決めます。
表1.ヒドロキシプロピルセルロース
(HPC)濃度と色の関係
注射器で水をはかり取り、ヒドロキシプロピルセルロースの入ったサンプル瓶に加えます。
ガラス棒でよくかき混ぜます(5分以上)。この際、なるべく気泡が入らないように気をつけます。
サンプル瓶にふたをして静置します。
図1 実験の手順
初めのうちは、白く濁っていますが、一晩放置すると、色がはっきりわかるようになります(図2)。
図2 着色したヒドロキシプロピルセルロース
ヒドロキシプロピルセルロースは白色粉末で、水に溶けます。その濃厚水溶液は、ある濃度・温度範囲で図3に示すようならせん状の分子配列をとります。コレステロールの化合物も同様の性質を示すことから、これはコレステリック液晶と呼ばれています。らせんの周期P(分子の向きが同じになるまでの一回転する距離)は、濃度や温度によって変化します。液晶状態では、反射光の波長λとPとの間には、
λ=nP( n: 屈折率、サンプルに固有の値)
の関係があります。濃度や温度によってPが変化するため、反射される光の波長が変化するため、液晶の色が変化したように見えます。
図3 コレステリック液晶の配列
自然の中の液晶の例としては、コガネムシの羽が知られています。コガネムシの羽もタンパク質からなるコレステリック液晶で、本実験で使用したヒドロキシプロピルセルロースと同じ原理で着色します。我々が普段使用しているインクや染料の色は、電子の動きによるものですが、ヒドロキシプロピルセルロースやコガネムシの羽の色は、分子の集合構造によって生じるもので、構造色と呼ばれています。
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