長く生きていると「座右の銘」のようなものができてくる。私の最初の座右の銘は、中学生の頃の「狼は群れない」だった。孤高を気取っていた訳だが、実際には狼は群れで狩りをするので、単なる厨二病だったと気恥ずかしくなる。
大学生になった頃からは「Simple is Best」が定番で、今でも何かの際にはこのフレーズを持ち出している。大学の授業で出会う内容には、難解なものもあるが、よくよく調べてみると、単純な原理に基づいているものが多い。逆に、あまりに複雑なものは実社会では扱いきれず役に立たないものになってしまう。高校で習う物理や数学の公式も同じだろう。多くの公式があるが、実は原理を表す数個の式を理解すれば、他は導出できる。原理を表す公式は、幅広い応用ができ、未知の問題にも適用できる可能性が高い。現実の複雑に見える問題でも、その中の本質は Simple で、それを見つけてしまえば、後は持っている知識と応用力で問題解決できることが多い。むしろ、その Simple な本質を見つけること自体が学問を志す人の喜びだろう。「この Simple な本質にたどり着いた自分って偉い!」ということなのかもしれない。
最近のお気に入りは「生き残るのは強いもの優れたものではない、変化に適応できたものだ」というものだ。今回 Webで少し調べて見た所、ダーウィンの言葉という説があるようだが、誤解という説もあった。ダーウィンはこんなこと言わないと思う(私見)が、現状に過度に適応しすぎて余裕をなくすと、環境変化に対応できなくなるという考えには賛同している。要は、今の勝ち組がいつまでもそのままとは限らないということだ。私の研究分野である画像認識研究(いわゆるAI分野)は、深層学習という技術によってこれまでにない急速な進歩を遂げた。さらに、近年は生成系AIと呼ばれる技術が広まり、誰でも簡単に利用できる環境が整った。日本は停滞の30年と言われたりしているが、これからはこうした技術により大きな変化が訪れることは間違いない。この変化に適応するにはどうすればよいだろう。私は結局「Simple is Best」、Simple な原理を学び、応用する力を養うことが重要と考える。大学の工学部で学ぶということは、今後何十年も変化の激しい社会で活躍するための底力を付けるという意義があると思う。大学人として、学生さん達をそんな風に育てたいと願いつつ、私の最近のテーマである「牛顔画像による個体認識」の研究を続けている。
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