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生レポート!大学教授の声

 

『生命に学ぶ科学』と出会い、『モノづくりナノ工学』に至る

 
2009年10月01日
熊本大学
伊原博

私は、子供の頃からモノを造ることが好きだった。実家が工務店であったこともあり、のこぎりや金づち、木切れなどがふんだんにあって、中学生の頃には自分の背丈より高い鳩小屋を2、3個は造った記憶がある。そんな私なので、大学進学の際に、モノづくりができる工学部を選ぶことに少しも迷いはなかった。ちょっとしたきっかけで応用化学の道に進むことになったが、その理由はさておき、これがその後、大好きなモノづくりを延々と続けることになる重要なきっかけとなった。

中でも、本格的な研究活動の開始となる卒業研究との出会いが、自分の進む道を決めた決定的なシーンであったと思っている。指導教授に勧められた研究課題は人工酵素の開発。具体的な研究方針も決まっていない時点から、課題名だけで希望に燃え、まだ見ぬ成功にわくわくしたものである。30年以上も前のことであり、当時はまだあまり知られていないバイオミメティクス(生命に学ぶ科学)に属する研究であった。実はこの研究に着手するまでは、目に見えるモノづくりを理想に描いていたが、生体の緻密な仕組みを学ぶにつれ、目には見えない巧みなモノづくりがそこにあることを知った。このインパクトは実に大きかった。

30年を経て、今では当たり前の考え方になっているが、生命におけるモノづくりの仕組みは、現代のナノテクノロジーの最も良いお手本となっている。私自身、このバイオミメティクスの創生期に、とことん基礎研究と戯れ、今はその概念を応用した有機薄膜やハイブリッド材料などのモノづくりを通じて、太陽電池や環境調和材料、医療材料など、さまざまな応用分野にチャレンジしている。

今になってわかる工学部の魅力、それは基礎研究が実を結び、人や社会に、そして地球や宇宙に貢献できる物質やシステムを創ることを実感・体験できる点にある。豊かな未来を切り拓く、独創力あふれる次世代のモノづくりを、これから工学部に進学される皆さんに大いに期待したい。

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