銅製の材料(例えば、銅線や10円玉)は使っているうちに、輝きを失って茶色っぽくなります。この実験では、食酢に銅線を浸して、その表面を輝かさせます。そして、表面からはがれた銅を、最先端の機能繊維(キレート繊維と呼びます)を使って、液中から回収します。
銅線の表面の銅が食酢へ溶けること【金属の酸への溶解】と、それに続くその食酢から銅イオンを、繊維を使って回収できること【酸からの金属イオンの回収】は、廃棄された携帯電話の中に含まれている貴重な金属を再利用するときと同じ方法です。
口の広いペットボトルにお酢30mlを入れる
計量カップなどを使って、お酢30mlをはかりとり、きれいに水洗いしたペットボトルへそれぞれ入れる
銅線をお酢に入れ、
よく撹拌(かくはん=かきまぜること)する
銅線5㎝をペットボトルに入れて、ふたを閉め、[撹拌1分+放置4分]を4回繰り返す
2種類の繊維をそれぞれ入れて、よく撹拌する
繊維を5㎝程度に切って、それぞれお酢に入れ、[撹拌1分+放置4分]を4回繰り返す
銅線と繊維の色の変化を確認する
お酢に入れる直前での銅線の色の違いと、キレート繊維とナイロン繊維の色の違いを観察する
繊維は細く、長くつながっています。細かくて、ばらばらなビーズ(粒)に比べると、ずっと扱いやすい材料です。一か所つかめば、全部を取り出すことができます。これまでは繊維は布の材料としてもっぱら利用されてきました。しかし、最近は、接ぎ木(グラフト)重合法という手法を使って、機能を備えた高分子の鎖を繊維に取り付けることができるようになりました。最先端の機能繊維です。この実験のように貴重な金属を捕まえるだけでなく、薬となるタンパク質を捕まえたり、お茶の苦みであるカテキンを捕まえたりする繊維も作れます。また、東京電力㈱福島第一原子力発電所の汚染水から放射性のセシウムやストロンチウムを除去する繊維も作られていて原発の現場で活躍しています。
「カニのハサミ」の構造をキレート(chelate)と呼んでいます。このキレートを使って、液中の銅イオンを捕まえることができます。このときの化学反応式を下図に示します。このイミノ二酢酸基というキレートは、何も捕まえていないときには無色ですが、銅イオンを捕まえるときれいな青色になります。色が濃いほどたくさんの金属を捕まえたことがわかるので、便利です。
ハンドソープやシャンプーの裏面に貼ってある成分表のなかに、「EDTA」とか「エデト酸」という記載があります(例えば、ライオン製の泡ハンドソープ『キレイ キレイ』)。「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid)のことです。英単語の頭の文字をつなげてEDTAと名づけられました。「エデト酸」とはEDTAのEDTの部分を無理やりに日本語で読んで、そこにAのacidを「酸」と日本語訳してくっつけて名をつけています。EDTAは下図の構造をしていて、上記のイミノニ酢酸基の倍の大きさです。その分、強力に金属イオンを挟んで捕まえます。そのため、水中のカルシウムイオン (Ca2+) やマグネシウムイオン (Mg2+) を取り去って、泡立ちをよくしてくれます。だから、ハンドソープやシャンプーに入っているのです。
キレート繊維とナイロン繊維の送付を希望される方は、Eメール(宛先:kawai-noma@chiba-u.jp、担当:河合)にて以下の項目を明記して、お申し込みください。
先着50名の方に、キレート繊維とナイロン繊維、そしてご希望の方には銅線をお送りいたします。
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