2つ以上のものを同時に流したとき、外側からは見えないパイプ中の流れの様子が見たい!でもガラスやプラスチックだと強度が心配だからイヤ!
そんなときにコンピューテッド・トモグラフィー(CT)を使うと物の内側が画像として出力されます。この技術は病院や、空港の荷物検査に応用されています。しかしながら、このCTは一基が1億円以上と高価であり、手軽に使えるものではありません。
千葉大学 武居研究室は、プロセス・トモグラフィー(PT)というCTより大幅に安価で、さらに高時間解像度(データ収集がミリ秒オーダ)で測定可能な技術の研究をしています。この技術は、主に「固体と液体」や「固体と気体」などの、混相流の断面濃度分布を可視化する方法です。たとえばパイプの周りに設置された電極間において物理量を測定して、その測定を電極全ての組み合わせで実施し、感度関数と組み合わせることにより出力画像を再構成しています。測定する物理量は電気抵抗やキャパシタンスなどがあります。
この技術の応用はすでにガソリンを精製する大型のプラントに応用され、触媒と空気の混相流を画像化し、その濃度分布の取得に成功しています。今後船舶エンジン内の可視化にも利用が考えられており、それ以外に高分子材料の温度分布測定への応用も研究中です。これは射出成型への適応を考えており、今までは職人さんの「勘」であった部分を数値化できると予想しています。さらに工業系以外にも応用されており、例えば人工心臓内に発生してしまう血栓の検出などが挙げられます。これは患者さんにとって必要不可欠なテーマであり、本研究室では静止血液中にて血栓の画像化に成功しています。他にも、マイクロ流路への応用もされています。この流路は800μmであり、ポリスチレン粒子と水の固液二相流の濃度分布の取得に成功しています。この技術は今後、iPS細胞などの細胞製造プロセスへ応用が可能と考えています。
このようにPTはさまざまな分野に応用されています。今後も「この分野には応用できない」と決めつけずにさまざまな分野にチャレンジしていきます。