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授業紹介

自然科学特論  〜専門領域を超えた豊かな発想の涵養のために〜

自然界に見られる『形』?

 本学は、開学以来、全国の工業高等専門学校(高専)からの3年次編入生を受け入れている工科系単科大学である。在籍学生は、既に高専在学中から専門性の高い工学教育を受けており、大学進学後の専門科目の履修により専門知識をさらに強化することで、本学での卒業研究、それに接続する博士課程での本格的な研究活動にスムーズに取り組むことができている。一方で、自身の知見や思考が専攻する専門領域に偏りすぎてしまう傾向がある。専門家の養成を目的とすれば極めて充実した教育を提供できているものの、異分野の知識の吸収に興味をもたない学生を育成してしまっているとすれば、危惧されるべきことである。昨今では、技術者の使命は、技術が単に性能の高いものを生み出すためのものではなく、技術が社会に与える影響や持続可能性などにも配慮できる、広範な知識と多角的な視点をもつ人材であることが、ますます求められるようになってきた。この要請に応えるための高専、本学の教育における、いわゆる教養科目(リベラルアーツ教育)の重要性は見直されるべきであり、これらの問題を解決するために、総合教育院では「リベラルアーツ教育の再定義」を含めた新たなリベラルアーツ教育の確立を模索している。

 このような状況で、総合教育院、自然科学分野では、専門性に特化することなく、あらゆる専門分野を横断的に俯瞰できるような理科系リベラルアーツ科目として「自然科学特論」を大学院向け、また学部の先取り科目として提供している。この科目は、全課程・専攻対応となっており、自然界に見られる様々な現象、事象を、それぞれの専門知識を生かしながら多面的に考察ができるような話題を取り扱い、多様な思考能力を養える構成に努めている。例えば、我々が自然界で目にする「形」に注目しただけでも、なぜこのような形となったのか、この形になることでどんな利点、機能が発現するのか、等々を各自で考察するだけでも専門領域を跨いだ大いなる発見を見出すことも可能になる。シャボン玉が丸くなる理由も、数学、物理、化学の知識が必要であることに気づく。頭の中の引き出しにバラバラに収納してあったこれまで蓄積した知識が相互に関連することを見出し総合的な考察力として、「役立つ知識」に発展するであろうと期待している。他にも、油で揚げたポテトチップスはなぜ曲面を持つのか?、雨上がりの地面、メロンのひび割れに法則があるのか?シマウマの柄はどうしてできるのか?、自然界には何某かの理由があってそうなっていると想像でき、理科に興味を持った幼い時期の記憶を、専門教育を受けた学生が再度、現時点で持ち得る知識と経験を駆使して考えることのできる講義を提供して、豊かな発想ができる技術者の涵養に注力している。

豊橋技術科学大学 総合教育院(武藤浩行、岡田浩) 

豊橋技術科学大学 総合教育院 自然科学分野
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