
2016年11月30日
東北地区
秋田大学 国際資源学部
秋田大学は、国際資源学研究科を中心にして、国際的な水準の教育・研究を推進し、国の内外で活躍する有為な人材を育成するとともに、地球規模の課題の解決に寄与することを基本理念の1つにしています。
秋田大学国際資源学研究科では、資源環境地質学や金属回収工学のなど資源学の特色を生かして2015年1月にJST-JICAによるSATREPSプロジェクトとしてセルビア共和国東部のボール銅鉱床地域での「持続可能な資源開発実現のための空間環境解析と高度金属回収の融合システム研究」が正式採択され、資源学国際交流研究を進めています。
世界では銅や亜鉛、レアメタルなどの金属資源の需要増大による資源開発の活発化とともに、広域的な環境汚染が資源の安定供給に対する阻害要因となりつつあります。本研究では環境汚染に悩まされるセルビア共和国において先進リモートセンシングデータと地表データを組み合わせた3次元的な環境解析・評価と高度な金属回収技術を融合し、持続可能な資源開発に不可欠な開発と環境との両立を目指した広域環境評価修復システムの研究開発を行っています。研究の概要が図1に示されています。具体的には、汚染地域や環境対策が必要な地域を先進的なリモートセンシング解析技術により見出し、そのような地域に金属回収技術を適用することで、鉱山からの廃さいや廃水から金属回収をするとともに無害化を進めるシステムの研究開発を行っています。
本研究テーマでは、同一地域での地表調査データに基づく広域地球化学図のデータと衛星画像解析結果を統合し、資源開発地域の新しい迅速で高精度な先進的衛星画像解析法を構築することを目的としています。
a-1. 広域地球化学図からの環境影響評価
研究テーマ:地表調査からの環境影響評価
セルビア共和国東部のボール銅鉱床地域(約5,000 km2)の地域において河川水の現地での観察、観測と化学分析結果から、1)河川堆積物、2)河川水中の0.2ミクロン以上の懸濁物、3)河川水中の0.2ミクロン以下の物質と溶液についてpH値も含め40元素程度の広域地球化学図を作成し、汚染地域と非汚染地域の区分け(汚染の定義)と有害元素分布の特定を行います(図2)。これらのデータを衛星画像解析データと比較することで、衛星画像解析データと実際の汚染現象の多くの多様な関連性を見出すことができます。地表データと衛星画像解析の間に新たな関連性が明確になれば、衛星画像解析結果から世界中の資源開発地域の汚染状況を迅速に反復して把握することが可能になります。また、地表調査・観測によるデータからは、河川水中の各元素の化学形態や下流地域や他国への元素の運搬プロセスを明らかにすることができ、これらのデータは、多国間にわたる環境保全に資する基礎データとなります。
a-2. リモートセンシング
研究テーマ:空からの環境影響評価
鉱山活動で排出された廃さいや廃水は、河川水に運搬されたり風で飛ばされたりと広域に拡散します。これらのデータを現地で迅速に反復して調査・観測することは困難であるため、本研究テーマでは衛星画像を用いて広域に調査します。本研究では、衛星や航空機から取得した画像が持つスペクトル特性から地表面に拡散する汚染物質の分布を特定することが目的です。広域画像であるLANDSAT画像からASTERとWorldView2へと徐々に高解像度な画像へと分析を進めます。さらに無人航空機 (Unmanned aerial vehicle, UAV)に搭載したハイパースペクトルカメラでより高解像度で高スペクトル分解能な画像の取得を目指します。
また、画像の精度を評価するために現地調査を行い、地表面物質をサンプリングしその鉱物組成やスペクトル特性を現地や実験室で測定します。水については現地でスペクトル特性を測定し、pHデータや化学組成データと比較します。
画像データと現地調査データを組み合わせることで、より信頼性の高い環境影響評価ができます。
b-1. 高温高圧環境下での金属回収
研究テーマ:鉱山廃棄物からの金属回収と汚染原因物質の除去
鉱山の生産工程で発生する廃棄物(選鉱尾鉱)には、通常の鉱石と比べて低品位ではあるものの、我々の生活に欠かせない金属となっている銅や様々なレアメタルが含まれています。その一方で、選鉱尾鉱は酸性の廃水の発生原因となる場合があるため、周辺地域の生活や健康、動植物への悪影響を鑑みると、金属回収と環境汚染物質除去を同時に達成する処理プロセスを確立する必要があります。
本研究テーマでは、金属を含む難溶解鉱物と、酸性廃水の発生原因となる硫化鉱物を同時かつ効率的に処理するため、高温・高圧条件を付与し浸出反応を加速的に行わせる加圧酸浸出法を用い、選鉱尾鉱の処理プロセスの開発を試みています。また、加圧酸浸出に加え、溶媒抽出-電解採取を用いた一貫型金属回収プロセスを構築し、80%以上の金属の資源化を目指しています。実験では、各種処理方法における分離メカニズムを表面化学あるいは熱力学的に考察し、銅を回収するための効率的な条件を検討しているほか、選鉱尾鉱以外にも金属を含む堆積物(?土や河川堆積物など)に対し、開発した処理プロセスが適用可能か調査しています。
b-2. 中和法および吸着法による金属回収
研究テーマ:鉱山活動により生ずる廃水浄化と金属回収
鉱山活動の過程で発生する様々な廃水は強酸性化しているとともに、鉄、銅およびマンガン、コバルトなどのレアメタルがイオンとして溶け込んでいます。そのような水が河川にそのまま放流されると河川水の利用が困難となるほか、動植物への悪影響や人の健康被害を生ずる可能性があることなど重大な環境問題となる場合があります。
本研究テーマでは、中和法と吸着法を組み合わせることにより廃水の水質浄化と含有する鉄、銅、レアメタルを資源として回収することを目標としています。
鉄と銅については、中和法により分離回収し、その他のレアメタルなどは吸着法により回収します。研究では実験室での基礎試験を基に廃水を2段階に分けてpHをコントロールする2段階中和プロセスを新たに考案するとともに金属種に対し選択性の高い新たな吸着剤を開発中です。今後、小規模な野外実験装置を開発し、実際の酸性坑廃水を処理し、水質浄化と金属回収が同時に可能なことを実証する計画です。
ボール鉱山地域で得られる成果を、世界の他の鉱山地域に適用することで、鉱業活動に関連する高精度広域環境影響評価を多くの地域で迅速に行うことが可能になり、世界の資源開発地域で数多く発生している同様の問題への展開が期待されます。また、本研究を通して、資源分野で国際的に活躍する日本人若手研究者の育成、さらには世界の鉱山地域への技術の適用および人的ネットワークの拡大を推進することができ、秋田大学にとっては、資源にかかわる総合的研究教育拠点形成活動の一つになります。
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