ベビーパウダーで発光ダイオードやがん検診! |
酸化亜鉛(ZnO)は古くからベビーパウダーの原料として用いられ、近年ではホワイトチョコレートや日焼け止めなどにも使われている身近で安全、安価な材料です。ベビーパウダー用の酸化亜鉛は空気中で亜鉛を燃やして作られる白い粉状の結晶です。
このような身近な材料である酸化亜鉛ですが、驚くべき可能性を秘めています。
粉末状の酸化亜鉛
島根大学総合理工学部では、溶接用のアークプラズマを使って空気中で亜鉛を蒸発させ、結晶性が優れた200ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリメートル)程度の大きさをもつ酸化亜鉛ナノ粒子の作製に成功しました。この粒子は単結晶なみの発光特性や発光ダイオードの作製にかかせないp型半導体(電子の抜けた穴が電流の担い手)の特性を持っています。これをガラス基板上のn型半導体(電子が電流の担い手)の特性をもつ酸化亜鉛層上に塗布することにより発光ダイオード(LED)を作れることがわかりました。既存の白色LEDはコストが高いことが問題ですが、ベビーパウダーを用いれば蛍光灯なみコストで新しい照明装置を作れるかもしれません。
また、バイオイメージングの分野では、酸化亜鉛ナノ粒子は、高価・毒性・退色性などのこれまでの蛍光色素の問題を解決した画期的な蛍光試薬となりえます。粉砕して小さくした酸化亜鉛ナノ粒子に抗体をつけることによりがん細胞などを光らせることができます。光を使った検知方法は人工衛星からイカ釣り船一艘(そう)を容易に検知できるように、光を当てられるところであれば、がん細胞一個でも検知できます。ベビーパウダーでがんの早期診断をすることも夢ではありません。
島根大学総合理工学部では、理学と工学の融合に加え、大学院の理工・医連携プログラムを通して医学部・生物資源科学部との学際領域の連携もさかんで、このような夢のあるものづくりの楽しさを体験できます。
酸化亜鉛ナノ粒子で蛍光染色した肝細胞の周囲の脂肪球(直径約1ミクロン程度)
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