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生レポート!大学教授の声

歩行空間の安全性向上

2019年11月22日
岡山大学環境理工学部 環境デザイン工学科
橋本 成仁
横浜国立大学工学研究院を象徴するLOGO

 歩行空間の安全性向上対策が注目を集めています。

 通学中の児童が交通事故に巻き込まれたというニュースに接したことがある方も多いのではないかと思いますが、事故にあうのは子どもだけではなく、最近の日本の交通事故では、自動車に乗っていて死亡する人よりも、歩いていて死亡する人の方が多い状況になっています。

 道路をより安全に歩ける空間にする必要があるのですが、現状、国内の道路で歩道が整備されている道路延長は2割以下だとされており、道路延長の8割を占める歩道が整備されていない道路を安全に歩ける空間にする方策が求められています。

 一体、どのような方法があるのでしょうか。例えば、外国では歩行者の多い地区への車の侵入を制限したり、車道の一部をかまぼこ状に盛り上げたり(ハンプ)、ポールを立てて狭くしたり(狭さく)、あるいは、道路を行き止まりや一方通行にすることで、通過交通を減らすことも行われています。

 これらの方法は歩行者の安全性を確保する点で非常に効果的であることが分かっているのですが、残念ながら、地元の人々自身の利便性や快適性も犠牲にするため、国内では反対されることが少なくありません。そこで、地域で受け入れられ易く、全体として安全性の底上げが期待できる対策が求められています。

 交通事故の主な原因は、自動車のスピードの出し過ぎです。特に、歩道が分離されていない道路では、車の速度をどうやって落とすかが課題となります。ドライバーは走っている道路の視覚情報から走行速度を無意識に決めています。そこで、路側線の位置や中央線の有無、路側帯の色、植樹帯の有無、沿道の建物の高さなど、ドライバーが見る景観をコントロールすることで自動車の速度をコントロールできるのではないでしょうか。

 我々の研究では、たとえば、路側線の位置を内側に引きなおして車道の幅を1m狭くすると自動車の平均速度が1.7km/h遅くなり、道路の中央線を消すと1.5km/h遅くなりました。また、路側帯に色を塗って車道との区別を明確にすると3.1km/h遅くなることが分かりました。

 現在は、この様な研究成果を用いて、実際のまちづくりに応用しています。

 写真は、島根県出雲市の出雲大社の参道、神門通りの様子ですが、この道路の計画にも、大学での研究成果が用いられており、地元の人や観光客が安心して歩ける空間になったと評価されています。

 大学の研究成果は、歩行空間の安全性向上という身近な分野でも貢献しているのです。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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