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生レポート!大学教授の声

行きたい大学・学部に行けなくても勉強も研究もやれる

2017年12月8日
神戸大学 海事科学研究科
山内 知也

 高校生の頃に私が夢見た将来と現在を比べます。一言だけ書くと、神戸大学海事科学部には日本と諸外国とを結び私達の生活を支える外航船の船長や機関長になるための学科があります。

 私が所属する海洋安全システム科学科は、船員の養成には直接関与していませんが、水環境や気象・海象、再生エネルギー、海洋安全工学、放射線と粒子ビーム科学について学べます。私は放射線の計測を物理化学の視点から研究しています。40年近く前には理論物理学に憧れていました。

 ところがあるルポルタージュを読み、原子力発電所内で働く下請けの人たちの厳しい労働環境を知り、何とかしたいと思い、原子力工学科に入学。問題の多い原子力発電は止めて核融合炉を作れば良いと漠然と思っていたのですが、その両方がともに難しいことを入学後に学びました。級友には放射能除去装置を作りたいと考えていた人物もいましたが、それもまず無理であることを学びました。

 東京電力福島原発事故の後、原子力工学よりも、地震や津波、あるいは、公衆衛生学や疫学を学んでおけばよかったと考えたりもしましたが、遅蒔きながら、それらについての勉強もしています。

 やりたかった理論物理学の研究には近づけなかったのですが、実験物理学の人たちとの交流はすぐに生まれました。私の研究対象は固体飛跡検出器です。米国バークレー校で早くからこれを用いて宇宙線研究をされていた大御所の先生とも知り合うことができました。国内では早稲田大学の先生と。今では水素からウランまで、日本国内のイオン加速器を使った研究をしています。

 固体飛跡検出器はイオンの通り道をエッチング処理によって拡大し顕微鏡で観察するものなのですが、エッチング前の損傷構造を調べる研究を、フランスのストラスブール大学や重イオン加速器研究所と協力して進めています。これも水素からキセノンくらいまで研究していて、一番だと自慢できるデータベースが出来上がっています。これに基づいて損傷を生み出す電子の動きをシミュレーションする段階にあります。

 ここまで来ると面白いことに理論物理学の先生達との交流が始まりました。定年まで10年ほどですが、自分たちの実験データは理論でしっかり説明したいと思っています。後、この技術を使うと直径1ナノメートル以下の細管加工が可能です、それも作ります。

 18歳の夢は18歳の時には実現できなくても、もっと先で現実になるかも知れません。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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