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生レポート!大学教授の声

研究と勉強

2015年10月15日
京都工芸繊維大学 材料化学系
堀田 収
研究と勉強

工学の研究は、ものや物事の本質を究める基礎的なアプローチと世の中の役に立つ材料やシステムおよび方法を開発する応用的なアプローチから成り立つ。数学、物理学、化学、生物学等、多岐にわたる学問分野が関係する。これらの分野は、17世紀後半から20世紀前半にかけて徐々に発展した。日本における数学の発展もこの時期に対応する。現代の工学研究は専門化・細分化と多様化・広域化とが同時進行し、基礎学問の習得(勉強)と研究対象への応用を同時に遂行することが年々大変になりつつある。多くの専門書や学習書が世の中に出回り、情報のオンライン化が拍車を掛けている。一方、我々日本人は、日本語以外に英語をはじめとする外国語を学習しなければならない・・・・

このような状況下で、研究と勉強に費やす時間とエネルギーの配分をどのようにバランスさせるか、が改めて問われる。勉強は確立された事柄を正確に身に着けることであり、研究は未知の世界を探求する作業であるという正反対の側面をもつ。異質の感性を両立させ、これからの工学研究を如何に進めるか、アカデミズムとエンジニアリングに携わる全ての人間が追究すべき事柄である。このように考えると、「研究と勉強」というテーマは教育研究の本質を追究する作業につながる。

大層抽象的になったが、あらゆる学問の基礎である数学教育を現代的にアップデートすることが最も効率的なやり方の一つと考える。私見として、今日の工学部教育で複素解析(函数論)等、一昔前なら履修できた科目が、難しいという理由で余り講義されていないように思える。ただ、幸いにも日本には関孝和以来の数学の伝統があり、「算額」等の形で民間にも数学が広く浸透している。このことは、第二次世界大戦後の日本の科学技術の発展と無関係でないであろう。今後の工学部における教育で、このような親しみやすい形で数学を復権させることが出来ないだろうか?

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