埼玉大学・熱工学研究室では、目にもとまらない速さで起こる「燃焼・爆発」現象を、超高速度カメラを使ってとらえ、その一瞬に隠された謎を解き明かす研究に挑んでいます。
動画は、水素・酸素・アルゴンの混合ガス中を秒速1,800メートルで飛翔する球形飛行体のまわりに形成される「デトネーション(爆轟)」を可視化撮影したものです。高速で飛翔する物体のまわりで、いったい何が起こっているのでしょうか?
図1 球形飛行体を用いたデトネーションの可視化実験装置
図2 球形飛行体まわりに形成されるデトネーション
「燃焼・爆発を研究しています」と聞いたら、どんな研究を想像しますか?
熱工学研究室では、火が燃え広がる「燃焼」や、そこから生まれる「爆発」について研究しています。なかでも私たちが注目しているのが、燃焼が非常に速く進む「デトネーション(爆轟)」という現象です。その速さは、条件によっては秒速2,000メートルにも達します。音よりもはるかに速く伝わり、わずかな時間で大きな圧力を生み出す、とてもダイナミックな現象です。
しかし、デトネーションはあまりにも速いため、私たちの目で直接見ることはできません。そこで活躍するのが、1秒間に何十万、何百万コマもの撮影ができる超高速度カメラと、シュリーレン法やシャドウグラフ法と呼ばれる可視化技術です。これらを使うことで、普通のカメラでは見ることのできない衝撃波や、ほんの一瞬で形を変える燃焼の動きを「見える化」します。冒頭の動画は、このようにして撮影したものです。
では、実際にデトネーションはどのようにして生まれるのでしょうか?
私たちは、図1のような実験装置を使って、その瞬間を詳しく調べています。図2は、冒頭の動画から切り出した一場面です。装置から球形飛行体を高速で射出すると、飛行体の前方に強い衝撃波が発生します。この衝撃波によって周囲の可燃性ガスが急激に圧縮・加熱されると、ガスが着火して燃焼が始まります。そして条件が整うと、衝撃波と燃焼が一体となったデトネーションが形成されます。実験で初めて現象を捉えた瞬間、そこには普段の生活では決して見ることのできない世界が広がっています。
「なぜ、ここでデトネーションが起こったのだろう?」「どうすればデトネーションを止められるのだろう?」「逆に、この大きなエネルギーをうまく利用できないだろうか?」実験で得られたデータを一つひとつ解析し、こうした疑問の答えを探していくことが、私たちの研究です。
デトネーションには、実は二つの顔があります。一つは、水素エネルギー設備や化学プラントなどで発生すると、重大な事故につながる可能性がある「危険な現象」としての顔。もう一つは、その大きなエネルギーを利用して、飛行機やロケットなどを動かす次世代のエンジン技術につながる「可能性を秘めた現象」としての顔です。だからこそ私たちは、デトネーションを「防ぐ」だけでなく、「利用する」ことも目指して研究しています。
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