炭素材料は、電池や燃料電池、浄水、ガス分離など、エネルギー・環境分野で幅広く利用されています。その性能を左右するのが、目には見えないナノメートルサイズの孔や骨格の構造です。私たちは、原料を混ぜて炭素源となる樹脂をつくり、これを炭素化して得られる「カーボンゲル」を研究しています。樹脂をつくる際の条件やその後の熱処理を工夫することで、メソ孔やミクロ孔の大きさと量、さらには材料全体の形状まで制御できます。用途に適したナノ構造を設計し、炭素材料の新たな機能を引き出すことを目指しています。
カーボンゲルは、水に溶解させた原料を反応させて炭素源となる樹脂を調製し、それを不活性雰囲気下で加熱して炭素化することで得られる多孔質炭素です。炭素源樹脂の形状と細孔構造は、炭素化後のカーボンゲルの構造に受け継がれます。樹脂の調製は基本的に原料と触媒を混ぜて反応させるという簡単な方法で行うことができ、原料の濃度や触媒の種類・量、反応温度などを変えるだけで、主にメソ孔の大きさを調整できます。メソ孔とは直径がおよそ2~50ナノメートルの孔のことで、分子やイオンが内部へ移動するための通り道として働きます。
炭素化して得られたカーボンゲルに、「賦活」と呼ばれる二酸化炭素や水蒸気のような弱い酸化性ガスが存在する雰囲気下で熱処理を行うと、炭素の一部が除かれ、ミクロ孔と呼ばれる直径2ナノメートル未満の細孔が形成されます。ミクロ孔は分子を取り込む場として働くため、炭素材料の吸着量や反応に利用できる表面積を増やすことにつながります。このため、合成段階で形成するメソ孔と、賦活によって導入するミクロ孔を組み合わせれば、「物質を速く運ぶ構造」と「多く取り込む構造」を一つの材料に持たせることができます。
炭素源樹脂をつくる段階では、反応前の溶液が流動性を持ち、反応が進むと固化します。この性質を利用することで、粉末だけでなく、板状や塊状などの形を与え、その形を維持したまま炭素へ変換できます。このような技術を駆使して細孔構造を設計することで、二次電池や燃料電池ではイオンやガスの移動を促進させ、電極反応や触媒反応を効率化できます。また、排水や排ガス処理では、ミクロ孔による高い吸着量と、メソ孔による速い吸着速度の両立が期待できます。さらに、用途に適した形状に成形できれば、装置への組み込みや使用後の回収も容易になります。ナノサイズの孔から目に見える外形までを一体的に設計することで、高性能であると同時に、工業的にも量産しやすい炭素材料の実現を目指しています。
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