ゴジラのような大きな怪獣が動いて街を破壊する!そのようなシーンは実在せず、多くの場合、CG(コンピューター・グラフィックス)で作られています。ただ、確かにCGを使えば怪獣はリアルに描けますが、怪獣の「動き」はどう表現すればよいでしょうか?怪獣に限らず、実物ではなく模型を使って動きを「それらしく見せる」には技が必要です。これがいわゆる特撮(特殊撮影SFX)技術です。これだけ聞くと、繊細な勘どころを必要とする職人技のように聞こえますが、実は、そうでもないんです。それらしく見せるのは感覚ではなく科学です。実演を通して体験してみましょう!
特撮にも様々ありますが、ここでは一例として「大きな壁が倒れる!」様子を、小さなミニチュア模型を使って再現することを試みてみます。ミニチュア模型が実物に対してどの程度小さいのかという数値によって決まる再生速度を調整することで、どれだけ実物現象に近づいた様子が得られるのかを比較してみましょう。驚くほどその差がないことを実感していただき、特撮が科学であることを感じていただきます。
再現しようとする実物である箱(材質はそれなりの重さがあれば種類は問わない)と、縮尺1/4および1/9 のミニチュア模型の箱(材質はそれなりの重さがあれば種類は問わない)を用意し、お互いが倒れる様をそれぞれ別々にカメラ(できれば高速度カメラが望ましい)で撮影します。
撮影したコマ送り画像の再生速度を変化できるソフトを用いて、2種類のミニチュアの箱が倒れるまでの様子を「スロー再生」して、実物の箱が倒れる様子を再現できるような再生速度倍数を探します。この操作を1/4および1/16の2種類の縮尺で行います。そのときに見つけたスロー再生速度(倍数)を記録しておきます(スロー再生するので倍数は1以下)。
再生速度倍数はそれぞれ以下のようになることを確認します。
(1)1/4模型の場合、再生速度倍数は1/2
(2)1/16模型の場合、再生速度倍数は1/4
以下の連続写真は、縮尺1/50の模型(中央)を上記の再生速度倍数で調整した動画と実物動画(右上。実速)を並べて示したものです。ほぼ同じ動きをしていることがよくわかります。
上記の関係式は「相似則」と呼ばれるもので、空気抵抗を無視できる場合に物体が重力によって引っ張られて運動する際に成立する関係式です。より詳しくいえば、重力によって加速する物体の運動では、AからBの状態に変化するための時間は、サイズ(スケール)の平方根に依存します(=AからBの状態に変化するための時間を2つ掛けたものがスケールに依存)。つまり、先ほどの箱の問題(1)では1/2x1/2が1/4、(2)では1/4x1/4が1/16となり、両者とも「ちょうど」縮尺に合致します。このことは、「小さくすれば現象は早くなる」ことを意図していますが、半分のサイズになったからといって時間も半分になるわけではないということを示しています。特撮技術はこの関係式を使って縮尺模型で実物のようにリアルに動くさまを再現しています。
小さな世界における時間は大きな世界における時間よりも早く進む。あたかも「不思議の国のアリス」であるような童話の話のようでもありますが、人間より小さな白うさぎが懐中時計をもって「時間を気にしている」のも、実は「彼らの世界では時間が早く進むので常に時間を気にしている」という意図だったのかもしれません。どの程度時間が短くなるのかは、上で説明したように「どういった現象を再現したいのか」に強く依存します。なので「これを再現しよう」という目標がきまれば「これを満たせばよい」という法則を導き出せます。その妥当性を確認するために、今回皆さんに紹介した箱を倒す実験のような模型を用いた実験を行い、「法則の確認」をします。逆に、ある事柄が他の評価軸により「なぜか」整理できる場合、その背景には何かしらの法則が潜んでいるということになります。特撮のように「なぜか再生速度を調整するとリアルに見える」のもそうですし、本川達雄先生の名著である「ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学―(中公新書)」にもそのような事例が沢山あります。一例としてよく見る「動物の一生」がそれです。縦軸に動物の平均寿命をとり、横軸に動物個体の平均重量を取ると、概ね1線上にデータが並びます。これが何故なのか、興味がある方は是非本をとって読んでみてください!
| 掲載大学 学部 |
豊橋技術科学大学 工学部 | 豊橋技術科学大学 工学部のページへ>> |
| 私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |