トップページ > おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界) > 色ガラスをつくる

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

色ガラスをつくる

2020年4月10日
岡山大学 環境理工学部

はじめに

 ガラスの中では、光が散乱することなくまっすぐに透過します。そのため、ガラスは透明な材料の代表に挙げられます。古くから窓ガラスや鏡、ガラス容器、照明器具や眼鏡レンズといった身近な生活用品に広く利用され、他にも、テレビやスマートフォンの画面、インターネットの情報通信を支える光ファイバーなど、私たちの便利な生活に欠かすことができない材料の一つになっています。

 一方で、教会のステンドグラス、切子などの工芸品では、色がついた鮮やかなガラスが利用されています。サングラスや化学薬品を入れる褐色の瓶などでは、目的は強い光を遮ることですが、同じく色がついたガラスを利用しています。このようなガラスが色づいて見えるのは、私たちの目に見える光(可視光)のうち、一部の色の光が吸収され、その残りの色(補色)だけが通り抜けて目に届くからです。どの色を吸収し、どの色を透過するかで、ガラスの色が決まり、様々な彩りの色ガラスがつくられています。

 ガラスは、その原料となる物質を高温でドロドロに溶かした後、冷やし固めることでつくることができます。このとき、特定の色だけを吸収する成分(着色剤)をガラス原料の中に含めることで色ガラスをつくることができます。ガラスの着色剤には、様々な種類がありますが、ここでは、金属の酸化物による着色に注目し、色ガラスをつくる実験を紹介します。

 ここで紹介する実験は、オープンキャンパスなど、私たちの研究室を紹介するイベントにて、色ガラス作製の実演を行うときに使っているものです。実験時の安全はもちろんのこと、実演後に色ガラスビーズを持ち帰っていただいても大丈夫なように配慮しているつもりですが、実際にこの実験を行うには、高温の電気炉などの設備と少しの経験が必要になります。

用意するもの

  • ガラス原料:リン酸二水素カルシウム一水和物(市販品)を予め、300℃程度で乾燥、水分を除去したもの25 g(1回のガラス作製あたり)
  • 着色成分:酸化クロム(III) 40 mg、酸化マンガン(IV) 400 mg、酸化コバルト(II,III) 30 mg、酸化ニッケル(II) 40 mg、酸化銅(II) 40 mgなど、いずれかの金属酸化物を選択
  • 乳鉢と乳棒:ガラス原料と着色成分をよく混合させるために使います。
  • アルミナるつぼ(B1型、30mL):ガラス原料を高温で溶かすときの容器です。
  • トング:高温のアルミナるつぼを挟んで取り扱うために使います。
  • 電気炉(1200℃程度):ガラス原料を高温で溶かすために使います。
  • ステンレス板(5 mm厚、30 cm角程度):溶けたガラスをこの上に流し出して冷却します。鉄板や真鍮板でも構いません。
  • その他、必要に応じて、天秤、薬さじ、耐火れんが、耐熱グローブなどを使用します。

実験

  1. 乾燥済みのガラス原料はサラサラとした粉末です。乾燥済みのガラス原料はサラサラとした粉末です。

    ガラス原料となる市販の試薬リン酸二水素カルシウム一水和物を予め、300℃程度で乾燥、十分に水分を除去したもの25 gを乳鉢に入れます。

  2. 白いガラス原料の上に少量の着色成分を加えました。白いガラス原料の上に少量の着色成分を加えました。

    着色成分となる金属酸化物のいずれかを選び、所定の量を乳鉢に加えます。

  3. 混合すると、白いガラス原料が薄く色づきます。混合すると、白いガラス原料が薄く色づきます。

    乳棒を使って、白色のガラス原料粉と着色剤の粉をよく混合します。

  4. こぼさないように全量を入れましょう。こぼさないように全量を入れましょう。

    混合したガラス原料の全部をアルミナるつぼに入れます。

  5. 耐熱グローブを着けて、トングでアルミナるつぼを出し入れします。耐熱グローブを着けて、トングでアルミナるつぼを出し入れします。

    ガラス原料を入れたアルミナるつぼを1200℃に設定した電気炉に入れ、20分間保持します。このとき、ガラス原料に含まれる水分の除去が十分であれば、吹きこぼれる心配はありません。

  6. 高温の物体からは、熱輻射による光を発しています。高温の物体からは、熱輻射による光を発しています。

    電気炉からトングを使ってアルミナるつぼを取り出し、ステンレス板の上に溶けたガラスを滴下します。

  7. 溶けたガラスを小さめ(直径1 cm程度)に滴下するのがコツです。溶けたガラスを小さめ(直径1 cm程度)に滴下するのがコツです。

    溶けたガラスは、ステンレス板の上で冷えて固まりガラスになります。このとき、色がどのように変化して色ガラスになるか、観察します。

実験上の注意
  • 電気炉から取り出したアルミナるつぼや出来たての色ガラスは、高温で触ると火傷します。触れるのは、十分に冷えてからにしましょう。
  • 急に冷やされて出来たガラスは、不意に割れて破裂することがあります。近づいて観察するときは、安全メガネを着用しましょう。また、割れたガラスや折れたガラス繊維の鋭く尖った部分で怪我をしないように注意しましょう。

さて、出来たガラスの色は、何色でしたか?

 上の写真の例では、着色剤として酸化ニッケル(II)を用いました。着色剤の元の色は鈍い緑色でしたが、鮮やかなオレンジ色のガラスが出来ました。

 他の着色剤を用いたとき、着色剤の量を増減したとき、2種類以上の着色剤を混ぜたとき、ガラス原料と着色剤を十分に混合しなかったとき、それぞれどのような色ガラスが得られるでしょうか。

酸化クロム(III)混合不十分 酸化銅(II)酸化マンガン(IV) 酸化コバルト(II,III) 酸化クロム(III)多め 酸化ニッケル(II)酸化クロム(III)混合不十分 酸化銅(II)
酸化マンガン(IV) 酸化コバルト(II,III) 酸化クロム(III)多め
酸化ニッケル(II)

追加実験

市販の水彩絵の具「しろ」と「あいいろ」市販の水彩絵の具
「しろ」と「あいいろ」

 絵の具には、この実験で用いた着色剤と同じような顔料が含まれていて、ガラスの着色剤として利用できるかもしれません。追加実験として、水彩絵の具「しろ」と「あいいろ」をガラス原料に加えて、同じように色ガラス作りの実験を試みます。

 ガラス原料25 gに水彩絵の具それぞれ3 gを水で溶いて練り込むと、もちろん絵の具の色で着色したガラス原料になります。少し絵の具を入れすぎたかもしれませんが、

水彩絵の具「しろ」と「あいいろ」を練り込んだガラス原料

 それらを1200℃の高温に20分間保持して、溶けたガラスを冷やし固めると…

「しろ」の絵の具を入れた色ガラスは黒く(透かしてみると紫色にも見えます)、「あいいろ」の絵の具を入れた色ガラスはほとんど無色になりました。

なぜ?と思った方に

「しろ」の絵の具には酸化チタン(IV)が入っていて、ガラス原料と絵の具を高温で溶かしてときにTi4+ + e- → Ti3+の還元反応が起こったと考えられます。酸化チタン(IV)は、紫外線を吸収して光触媒機能を示すことが知られていますが、Ti4+が可視光を吸収しないため白色の顔料となります。一方で、Ti3+は可視光を吸収するため、それを含むガラスには色がつきます。

 絵の具のチューブにも記載されていますが、「あいいろ」の絵の具にはプルシアンという顔料が入っていて、高温でそれが分解還元してFe2+になったと考えられます。Fe2+は近赤外光を吸収しますが、可視光をほとんど吸収しないため、無色透明のガラスが出来ました。

 詳細は省きますが、実際に、「しろ」と「あいいろ」の水彩絵の具に、それぞれチタンと鉄が含まれていることを蛍光X線分析法による元素分析で確認し、次に、それぞれアナターゼ(酸化チタン(IV)の一つ)とプルシアン(おそらく、ヘキサシアニド鉄(II)酸鉄(III)水和物)が含まれていることをX線回折法による分析で確認しました。

最後に

 この実験では、金属酸化物を着色剤に用いて色ガラスをつくりました。ここで紹介した実験以外にも、ガラス原料の種類を変えたり、高温で溶かす温度や時間を変えたり、より希少な元素を組み合わせた着色剤を用いたりすることで、さらに多様な色合いとその変化を知ることができます。

 ガラスの中に溶け込んだ金属イオンが特定の色の光を吸収してガラスが色づく仕組みに興味が湧いてきたと思いますが、これは、大学で学ぶ無機化学の分野です。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

関連記事

2020-03-06

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

1cmの精度の自作スマホナビを作ってみよう

東京海洋大学海洋工学部

2020-10-30

生レポート!現役学生の声

ワクワクする未来を創造したい

神戸大学工学部

2015-06-10

生レポート!大学教授の声

工学のすゝめ

熊本大学工学部

2014-09-17

なんでも探検隊

凍らせて融かして分ける ~ガラス研磨材のリサイクル~

福島大学共生システム理工学類

2019-10-04

Pict-Labo

不可視光の撮影と新規アプリケーションの創出

宇都宮大学工学部

2013-09-20

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

電気を通すプラスチックで液晶ディスプレイを作ってみよう

山梨大学工学部

岡山大学
環境理工学部

  • 環境数理学科
  • 環境デザイン工学科
  • 環境管理工学科
  • 環境物質工学科

学校記事一覧

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)
バックナンバー

このサイトは、国立大学56工学系学部長会議が運営しています。
(>>会員用ページ)
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。
これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。