身の回りには様々な放射線が存在しています。しかし、我々は放射線を直接目で見ることができません。そこで、放射線から受け取るエネルギーや放射線が入射する数を数値化したり、放射線の通り道を可視化したりする"計測"が重要となります。今回はホームセンターや薬局などで購入できる材料を使って『霧箱』を作り、身の回りにある物質から放出される放射線の通り道を見てみましょう。
黒いアクリル板の上に透明なアクリル筒を接着剤で固定して容器を作ります。続いて、アクリル筒の内側の上部にスポンジテープを一周貼り付けてください。(図1)
発泡スチロールを切り出して、両面テープで接着し容器を作ります。大きさは、図2のように黒いアクリル板がすっぽり入るようにし、深さは1 cmぐらいにしましょう。
発泡スチロールの容器の中に、細かく砕いたドライアイスを敷き詰めて、その上に①で作成したものを載せます。(図3)
黒いアクリル板の中心に、線源(ランタン用マントルを小さく切ったもの)を置き、スポンジテープに無水エタノールをしっかり染み込ませて、透明なアクリル板で蓋をしてください。
懐中電灯で照らしながらしばらく見ていると、エタノールの蒸気が細かな粒となって観察でき、線源からは飛行機雲のような線が発生する様子がうかがえます。(図4)
今回の実験では、放射線の線源としてランタン用のマントルを使用しました。マントルにはトリウムという放射性物質がわずかに含まれており放射線の一種であるアルファ線を放出します。このアルファ線を可視化するために霧箱を用いました。
ではどのようにして可視化したのでしょうか?放射線は、高エネルギーの粒子や電磁波であり、物質中の原子の電子をはじき飛ばします。この現象を電離と呼び、放射線が物質中にエネルギーを付与する要因の一つとなります。霧箱の中は、気化したエタノール蒸気がドライアイスによって冷やされることで、過飽和状態となっています。過飽和状態の気体中に電離作用のある放射線が入射すると、放射線が周りの空気を電離し、発生したイオンを核として小さな液滴が生成され目に見えるようになります。このようにして放射線の通った跡が飛行機雲のように観察されます。
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