おもちゃの風車(かざぐるま)や風力発電の風車(ふうしゃ)など、世の中には色々な風車(ふうしゃ)がありますね。普通は風を受けると右回りか左回りかどちらか一方に回る風車ばかりです。ここではどちらにも回ることができるへんてこな風車を作ってみましょう。ちょっと風車に見えないかもしれませんが、ここで作る風車は図1に示すような半円の形をしたプロペラです。
型紙の印刷
用意した紙に図2の型紙を印刷します。
紙の切り抜き
①で用意した型紙を図3のように外側の実線の形に沿ってカッターで切り抜きます。直線部分を切るときは直線定規を当ててカッターで切るときれいに切れます。
折り目入れ
②で切り抜いた型紙の点線の部分に直線定規を当てて、切れてしまわないようにとても弱い力でカッターで傷を付けます。これは、きれいな折り目を作るためです。すべての点線部分に傷を付けたら、図4のように折り目を入れます。
テープ貼り
両面テープを図1の灰色に塗ってあるところに貼ってAの面とBの面を両面テープで貼り合わせて、図5のような形を作ります。この時、Aの面とBの面の位置をぴったり重ねないと風車が捻じれてしまい、どちらか一方にしか回らない風車になってしまうので、慎重に貼り合わせましょう。
蓋閉じ
半円部分ののりしろにスティック糊を塗るか、木工用ボンドを薄く塗って、図6のように風車の両端の蓋を閉じます。
穴あけ
千枚通しを使って、図7のように十字線の位置に穴を開けます。開ける穴はストローの太さより少し小さい目にします。
軸受けの取り付け
図8のようにストローをはさみで斜めに切って、図9のように、⑥で開けた穴にストローを差し込みます。そして、風車からはみ出しているストローを図10のように風車から2~3mm離れたところを、はさみで切れば、風車の完成です。このときストローを斜めに切らないように気を付けてください。
軸作り
図11のように1辺2cmくらいの正方形に切り出した紙の真ん中に千枚通しで穴を開け、対角線で折って、図12のように軸として用意した丸棒にセロテープで取り付けます。
完成
出来上がった軸に、作った風車を図13のように差し込めば完成です。
扇風機やサーキュレーターを用意して、作った風車の平らな面側に風を当ててみましょう。初めに、風車を止めた状態で風を当てます。上手にできた風車だと、風を受けてもほとんど回りません。次に、風を当てながら、右回りか左回りどちらかの方向に手で回してみましょう。そのまま回り続けるはずです。反対方向に回すと、その方向に回り続けます。どちらの方向にも回るなんて、ちょっとへんてこな風車でしょう?
ここで、作ったへんてこな風車がなぜ回るのか、説明しましょう。きれいに作られたへんてこな風車は、止めた状態で風を当ててもほとんど回りません。それは図15の(a)のように対称な形の風車の正面から風が当たっても、風の力も風の向きと同じになるため、風車を回転させる風の力が働らかないからです。
ここで、風車に回転を加えると、図15の(b)のように、風車から見ると風車の移動方向に風向きが変化します。このとき、この半円の形の風車に働く風の力は、風車をより移動させようとする方向に働きます。風車の動いている方向に力が働くので、風車から見れば、風の力で後押しされるようになるので、動く速さはより速くなっていきます。これがへんてこな風車が回る理由です。
もし、半円の形ではなくて、図15の(c)のように角度を付けていない薄っぺらなものだと、同じように風車が動いても風の力は風車を止める方向に働いてしまうので、風車は止まってしまいます。もっとも風を受けても回らないのではこれはもう風車とは呼べませんね。
ここで、へんてこな風車を使って、もう少し実験を続けましょう。追加で用意するのは、
です。図16のように、用意した枠の真ん中に、輪ゴムを何本もつないだゴムひもを2本、風車の幅と同じ間隔で張り渡します。そして、張り渡した真ん中辺りで、図17のようにへんてこな風車の両端を2本のゴム紐にセロテープで取り付けます。準備はこれでおしまいです。
図18のように、風車が縦に、風車の平らな面が風上になるように、風車を風の中に置いてみましょう。すると、バタバタと左右に揺れだします。揺れが小さいようなら、風を強くするか、ゴム紐の張りを少し弱めてみましょう。
へんてこな風車の性質は先に説明した通り、風車が動いて風が傾いて当たると、傾いている側に力が働きます。風車が揺れ始めると、上に動いているときには上向きの力、下に動いているときには下向きの力が働くので、常に動いている方向へ動いている方向へ力が働くようになります。
動く方向と同じ方向に力が働くと、力は物体に仕事をしたことになり、仕事をされた物体の運動は激しくなる(運動エネルギーが大きくなる)という性質があります。これがへんてこな風車が風の中で揺れた理由です。この仕組みで起こる振動のことを専門的には「ギャロッピング」と呼んでいて、自分の動きでさらに揺れるようなっている振動なので「自励振動」という振動の種類に分類されます。
へんてこな風車と同じような性質は、半円以外に正方形にも見られます。そのため、正方形の断面をもった風車も今回作ったへんてこな風車ほどではないにせよ、同じように風の中で回りますし、揺れます。ぜひ試してみてください。
形によって風の中で物体に働く力は様々な変化をしますが、特別な形では、運動し続けるような性質を持ち、振動することがあります。こんなことが高層ビルやタワー、橋で起きたら、風が吹くたびにビルや橋が揺れてしまって大変なことになります。普段、建てられている高層ビルやタワー、橋では、このような現象が起きないように、形を少し変えてやったり、周りの流れが変わるように小さな羽を付けてやったりと様々な工夫がされています。背の高いビルや、長い橋を見たら、ぜひどのような工夫がされているのか観察してみてください。
掲載大学 学部 |
高知大学 理工学部 | 高知大学 理工学部のページへ>> |
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |