トップページ > おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界) > スマホのカメラで立体写真のしくみを知ろう!

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

スマホのカメラで立体写真のしくみを知ろう!

2016年12月27日
広島大学 大学院工学研究院エネルギー・環境部門
准教授 作野裕司

ここでは、写真測量という技術について紹介しましょう。最近、3Dのテレビや映画がはやっていますが、平面の画面が立体に見えるのは一体なぜなのでしょう。その謎を解くために、ここでは、2つの実験をしてみましょう。

実験1 自分の目で立体を感じよう!

用意するもの

紙コップ 1個

実験の手順

  1. 紙コップを机の上において、真上から両眼で見てみましょう。
  2. 次に右目を閉じて紙コップを見てください。すると左紙コップの左側面が広く見えるでしょう。
  3. 最後に左目を閉じて紙コップを見てください。すると今度は紙コップの右側面が広く見えるでしょう。

この3つの見え方を写真でとると、図1のようになります。人間の目は、このように両目で違う角度の画像を脳に送って、いろいろな風景を立体写真として認識しているのですね。

図1 いろいろな角度で見た紙コップ図1 いろいろな角度で見た紙コップ

実験2 スマホのカメラで立体画像を作ろう!

用意するもの

  • スマホのカメラ(またはデジタルカメラ)
  • フリーのアナグリフ作成ソフト(アナグリフメーカー)
  • Windowsパソコン(Macintoshではソフトが動かないため)
  • カメラとパソコンをつなぐUSBケーブル
  • 青赤メガネ

実験の手順

  1. STEREOeYe社のホームページ1)から、アナグリフ作成ソフト(アナグリフメーカー)をダウンロードして、Windowsパソコンにインストールしましょう。
  2. コップや空き缶、草木などの立体物を側面から左右の目で見るように、携帯電話のカメラ(またはデジタルカメラ)を使って少し左右にずらした2枚の写真を撮影します。
  3. カメラとパソコンをUSBケーブルでつないで、撮影した画像を、パソコンに取り込みます。
  4. アナグリフ作成ソフトを起動して、「Load Left Image」で「左側から写した写真」を読みこみ、「Load Right Image」で「右側から写した写真」を読みこみましょう。
  5. 最後にMake 2D imageと押すと、図2のように自分のカメラで写した写真が「アナグリフ画像」(青赤メガネで見ると立体に見える画像)が出来上がります。
  6. 市販(例えばSTEREOeYe社)の青赤メガネでアナグリフ画像を見てみよう。うまく撮影できていると、撮影した物体が立体に見えるはずです。撮影する物体や角度、距離等を変えて、迫力ある立体図になるように何度も挑戦してみましょう。最近は100円ショップで、色セロファンも売っているので、青赤メガネも自分で作ってみてもよいでしょう。

この実験から、立体画像は難しいものではなく、カメラがあれば比較的簡単に作れることが分かりましたね。

図2 アナグリフメーカーから作成された立体画像例(STEREOeYe社のホームページ1)より)図2 アナグリフメーカーから作成された立体画像例(STEREOeYe社のホームページ1)より)

以上の2つの実験から、2枚の写真画像を使えば、立体写真を作れることが分かりましたね。実はこの技術こそが、3Dテレビや3D映画を制作する基本なのです。これを、写真測量という技術に当てはめると、2枚の写真から、建物の高さや山の高さを計算することができるのです。

それでは、探究心の旺盛な人のために、写真から高さを知るという技術のしくみを図で説明しましょう。図3を見てください。この図は、上空から撮影した2枚の写真からビルの高さdHを求める計算方法がわかりやすく描かれたものです。基本的には左図のように同一の高さのものは、視差(観測地点の位置の違いにより、対象点の見える方向が異なること)の差(Pb-Pa)もすべて等しいはずです。今、A点が写真1の主点直下にあるとすると、右図のように表され、結局、求めたいdHは以下の式を使えば計算することができます。つまり真上から高さのある対象物を撮影した場合、2枚の空中写真を1枚の写真に重ねて、その位置ずれの長さを計算することで、ビルの高さ等を知ることができるのです。このようにして、実際2枚の航空写真と地上の測量結果から、等高線のある地形図が作られています。

図3 ビルの高さdHを求める式の意味(小田部(2000)2)の図を一部改変)図3 ビルの高さdHを求める式の意味(小田部(2000)2)の図を一部改変)

出典

  1. STEREOeYe、http://www.stereoeye.jp/software/
  2. 小田部和司、図解 土木講座 測量学(第2版)、技報堂出版、2000

参考

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

関連記事

2024-09-06

工学ホットニュース

人工知能を用いた量子化学計算の高速化

京都工芸繊維大学工芸科学部

2018-11-02

なんでも探検隊

カイコは偉い!~群馬桐生地域の地場産業を支える~

群馬大学理工学部

2018-01-19

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

結晶模型の作製

富山大学工学部

2024-09-13

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

平方根を精度よく計算してみよう

東京農工大学工学部

2021-08-20

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

身近な物質の結晶化と分子構造

豊橋技術科学大学

2017-02-03

Pict-Labo

写真や絵画の中の水を動かす技術

静岡大学工学部

広島大学
工学部

  • 第一類(機械・輸送・材料・エネルギー系) 
  • 第二類(電気電子・システム情報系) 
  • 第三類(応用化学・生物工学・化学工学系) 
  • 第四類(建設・環境系) 

学校記事一覧

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)
バックナンバー

このサイトは、国立大学55工学系学部長会議が運営しています。
(>>会員用ページ)
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。
これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。