この実験では、剛体(ある大きさを持ち、形を変えない硬い物体のこと)を回転させるときの「回転のしにくさ」や「回転の止めにくさ」を表す「慣性(かんせい)モーメント」という物理量について考えます。
例えば、少年野球では、ピッチャーが投げる速い球にバットが当たらないということがよくあります。この時、野球チームの監督さんは、「バットを短く持て!」と指導しますよね。バットを短く持つと、バットを振りやすくなるので、スイングスピードが上がります。これは、多くの人が経験することです。
慣性モーメントは、剛体の質量に比例し、質量が回転軸から遠くに分布しているほど大きくなります。慣性モーメントが大きいということは、回転がしにくいということです。また、これが大きいと回転を止めるときには止めにくくなります。
バットを短く持つということは、バットの端にあった回転軸が、バットの中心に移動したことになります。そうすると、慣性モーメントは小さくなり、短く持つ前に比べると回転させやすくなります。
そこで、今回は回転のしにくさや止めにくさを簡単に体験できるコマ模型をアイロンビーズで作ってみましょう。
※なお、この実験は、以下のホームページで公開されている実験を参考にしながら、いくつかアレンジを加えました。http://site.ngk.co.jp/lab/no124/
レールの設計図は、上記ホームページに記載されているもの
(http://site.ngk.co.jp/lab/no124/pref.html)を用いました。ここでは、レール本体はベニヤ板とビニールチューブで作りました。
出典:日本ガイシ「NGKサイエンスサイト」(http://site.ngk.co.jp/)
円形のプレートにアイロンビーズを隙間なく並べます。好きな模様をデザインして下さい。
アイロン台とアイロンシートでビーズを挟み、アイロン(温度設定:中)で両面に熱を加えます。
※大人の人と一緒に作業して下さい。
熱を加えて固まったビーズの両面をステンレスのバットで挟み、形を整えながら熱を逃がします。
竹串を刺すと、基本のコマができあがります。
慣性モーメントの大きなコマを作る場合は、円の外側にビーズを重ねます。ここでは1番外側の大きさに合わせて計42ピースのビーズを並べ、リングを作ります。
(1)~(3)と同様に作業して下さい。
※これを基本のコマの両面に貼り付けるために2つ作ります。
慣性モーメントの小さなコマを作る場合は、円の内側にビーズを重ねます。(5)と同じ重さにするため、使用するビーズの数は同じ数(計42ピース)として、できるだけ均等に並べて下さい。
※これも2つ作ります。
上記(5)または(6)で作ったパーツを基本のコマ(4)に接着剤で貼り付けると、慣性モーメントの大きい(または小さい)コマの完成です。写真手前は慣性モーメントが小さなコマ、奥が大きなコマです。
レールの設計図を参考に、ベニヤ板をカットし、接着剤で貼り付けます。
ビニールチューブはレールの形に合わせてはさみでカットし、はめこみます。ビニールチューブの上をコマが回転します。これをはめこむことによって、コマは円滑に回ります。
レールの高い側にコマをセットし、手を離します。重力を受けて、コマは回転しながら移動していきます。コマとレールが2組ある場合は、同時にスタートさせて比較するとよいでしょう。
同じ重さのコマでも、慣性モーメントの小さいコマ(写真手前)に比べ、慣性モーメントの大きいコマは回転しにくいため、2つのコマのスピードに差があることが分かります。
慣性モーメントの大きいコマは、一旦回転が始まると止めにくいコマでもあります。上り坂では、慣性モーメントの小さいコマがすぐに減速するのに対し、簡単には減速しない様子が分かります。
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