トップページ > なんでも探検隊 > 置賜の鯉をカワウから守れ! AIが見張る養殖池

なんでも探検隊

置賜の鯉をカワウから守れ! AIが見張る養殖池

2026年9月25日
山形大学 工学部 システム創成工学科

 山形県南部の置賜地方では、江戸時代から鯉の養殖が続いています。上杉鷹山の時代に始まったとされる米沢鯉は郷土の味として、今も長井市や米沢市の養殖池で大切に育てられています。

 ところが近年、この養殖池に「招かれざる客」が現れるようになりました。カワウという黒い大型の水鳥です。カワウは潜水が得意で、一日に約五百グラムもの魚を食べるといわれ、群れで飛来すると、一年以上かけて育てた鯉があっという間に食べられてしまうのです。人手の少ない養殖場では、広い池を一日中見張ることはできません。

写真1 養殖池全景写真1 養殖池全景

 そこで私たちは、長井市の(有)高橋鯉屋さんと協力し、AIに「見張り役」を任せる仕組みを作りました。養殖場にもともとあった四台の監視カメラの映像をプログラムが定期的に切り出し、画像を理解できる生成AIに「この写真に鳥はいますか」と問いかけます。AIが「いる」と判断すると、その画像と判断の理由が養殖業者のスマートフォンへ自動で届きます。

写真2 監視カメラ4画面写真2 監視カメラ4画面
写真3 スマホ通知写真3 スマホ通知

 実際の池で試すと、AIが「鳥がいる」と知らせたときの正しさは九十六パーセントで、誤報はほとんどありませんでした。費用も一日三百回動かして月に約二十ドル(三千円ほど)です。一方で、鳥を見逃す場合もまだあり、これをどう減らすかが次の課題です。この成果は、アメリカ野生生物学会の学術誌「Wildlife Society Bulletin」に、論文「Field evaluation of artificial intelligence early warning for bird depredation at carp ponds」として掲載されました。

 現在は、検知と同時に光などで自動的に追い払う装置の実証も始めています。カワウが来たときだけ刺激を与えるので慣れにくく、人がいなくても池を守ることを目指しています。

 この研究の面白さは、カメラで「見る」、AIで「見分ける」、記録を「ためる」、装置を「動かす」という流れが、鯉とカワウに限らず使えることです。同じ考え方で、田畑を荒らすイノシシや人里に近づくクマへの対策にも取り組み始めています。

 工学は研究室の中だけで完結しません。地域の人が長年悩んできた問題に飛び込み、現場の声を聞きながら、電子回路やプログラム、AIを組み合わせて解決策を形にする。そんな「地域の現場から生まれる工学」に、皆さんもぜひ挑戦してみてください。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

関連記事

2023-07-21

生レポート!大学教授の声

座右の銘

宮崎大学工学部

2025-07-25

環境への取り組み

水を使わない繊維の染色による環境負荷の低減と脱色による繊維の資源循環への貢献

福井大学工学部

2024-01-26

Pict-Labo

EVクローラ型多機能農業用ロボット制御システムの開発

北見工業大学工学部

2025-10-17

生レポート!大学教授の声

これからの時代の学びに大切なのは、誠実さ

東京農工大学工学部

2025-10-23

なんでも探検隊

ユーザが「使いたくなる」「使いやすい」情報システムを設計開発するために

香川大学創造工学部

2022-01-07

輝く工学女子!(Tech ☆ Style)

【vol.106】自分が夢中になれること

鹿児島大学工学部

山形大学
工学部

  • 高分子・有機材料工学科
  • 化学・バイオ工学科
  • 情報・エレクトロニクス学科
  • 機械システム工学科
  • 建築・デザイン学科
  • システム創成工学科

学校記事一覧

なんでも探検隊
バックナンバー

このサイトは、国立大学56工学系学部長会議が運営しています。
(>>会員用ページ)
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。
これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。