日本には約2,000種類の海藻が生育していますが、食用にされているのは100種類にとどまり、そのほとんどは活用されていません。食用海藻の中で、「スーパー海藻」とも呼ばれているアカモクは、健康に良いと注目を集めていますが、可食部は全長の3割に過ぎず、それ以外は廃棄されているのが現状です。私たちの研究室では、今まで見向きもされてこなかった未利用・低利用海藻の中には新しい効果を示す有効成分が含まれていると考え、研究を進めています。ここでは、2つの成果を紹介します。
①フコイダンによる蛋白質異常凝集阻害効果:フコイダンとは、海藻特有のネバネバ成分で、デンプンやセルロースと同じ多糖に分類されます。また、蛋白質の異常凝集状態であるアミロイド線維は、治療法が確立されていないアルツハイマー病やパーキンソン病の原因と言われています。研究室での検討の結果、図1に示すように、3種類の海藻由来フコイダンは異常凝集を抑制する効果を示し、特にアカモクフコイダンに強い活性があることが明らかになりました。
②クロメ抽出物による糖質・脂質吸収阻害効果:糖質や脂質はそれぞれ消化酵素アミラーゼ、リパーゼで分解された後、小腸から吸収されます。ですので、これら酵素活性を抑えることができれば、過度の糖質や脂質の吸収が抑制され、生活習慣病の予防につながると考えられます。図2に示す「クロメ」という海藻は一部食用としている地域はあるものの、鳥取では全く採集されてきませんでした。しかし、クロメ抽出物に上記2つの酵素活性を阻害する効果が見られたことから、この海藻の利用価値を高めることができ、その成果は商品化につながっています。
このように、今まで利用されてこなかった海藻の有効性をいくつか明らかにすることができており、今後、社会に製品として出していくことを目指しています。
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