トップページ > なんでも探検隊 > 洋上風力発電のための風況調査 -光で風を測る-

なんでも探検隊

洋上風力発電のための風況調査 -光で風を測る-

2022年11月10日
神戸大学 海洋安全システム科学講座

 現在日本においては、2050年までのカーボンニュートラルを目指して、洋上風力発電の開発が急速に進んでいます。洋上風力を開発するには、計画から運用に至るまでのあらゆる段階において、正確な風の情報が必要となります。風力発電事業では、その場を吹く風でどれだけ発電できるかが事業収入に直結するため、計画段階から慎重に風況を調査することが事業成否の鍵を握っています。

 洋上風力開発が先行する欧州では、従来、洋上風力発電所の計画海域に高さ100mほどの風況観測マストを建設して、風況を計測してきました。しかし最近の洋上風車の大型化に伴い、風車上端の高さは250m近くになってきたため、風況観測マストでは風況を正確に把握し辛くなってきました。そこで、ドップラーライダーと呼ばれる測器を使って、上空の風を計測する方法が開発されてきました。ドップラーライダーとは、大気中にレーザー光を照射して、風と共に移動するエアロゾル等から返ってきた散乱光を受信することにより、ドップラー効果を利用して上空の風況を計測する装置です。

 洋上風況を計測するのに使われるドップラーライダーには、主に、①鉛直ライダー、②フローティングライダー、③スキャニングライダーの3種類があります。①と②は、上方に角度を付けて複数のレーザー光を照射することにより、数百mの高さまでの風を計測するものであり、①を浮体の上に設置したものが②になります。③は海岸に設置して海上に向けてレーザー光を照射することにより、沖合数kmまでの風況を計測することができます。ただし、いずれの装置も直接計測できるのはレーザーを照射した方向の風速成分だけであるため、水平風ベクトルの計測精度を上げるために、③を2台用いたデュアル・スキャニングライダー観測等の研究開発も進められています。

 神戸大学は、2019年度~2022年度前期に行われたNEDO事業「着床式洋上ウィンドファーム開発支援事業(洋上風況調査手法の確立)」(図1)に参画し、青森県むつ小川原港を現場観測サイトとして(図2)、上で述べたリモートセンシング機器を用いた風況観測の技術開発に携わってきました。そこでの研究成果も踏まえ、現在、今後の国の洋上風況調査の指針となる「洋上風況観測ガイドブック」の作成が行われています。

図1_NEDO「着床式洋上ウィンドファーム開発支援事業(洋上風況調査手法の確立)」の概要図1 NEDO「着床式洋上ウィンドファーム開発支援事業(洋上風況調査手法の確立)」の概要
図2 洋上風況観測フィールド(青森県むつ小川原港)図2 洋上風況観測フィールド(青森県むつ小川原港)
※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

関連記事

2018-11-22

なんでも探検隊

風力発電の高効率化への取り組み

富山大学工学部

2022-01-14

環境への取り組み

カーボンマイナスを達成する下水由来の再生可能エネルギーで製造した冷温熱、CO2による植物栽培技術の実証研究

長岡技術科学大学工学部

2021-03-19

輝く工学女子!(Tech ☆ Style)

自由な発想でつくりたいものをかたちにする

新潟大学工学部

2021-09-10

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

建物のまわりの風の流れを調べてみよう

熊本大学工学部

2018-08-10

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

光を虹色に分解して「万華鏡」を作ってみよう

新潟大学工学部

2019-04-05

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

光を分ける道具を作り、いろんな色を見てみよう

大分大学理工学部

神戸大学
海洋政策科学部

  • 海洋基礎科学領域
  • 海洋応用科学領域
  • 海洋ガバナンス領域
  • 海技ライセンスコース 航海学領域/機関学領域

学校記事一覧

なんでも探検隊
バックナンバー

このサイトは、国立大学55工学系学部長会議が運営しています。
(>>会員用ページ)
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。
これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。