トップページ > なんでも探検隊 > 船舶バラスト水の処理

なんでも探検隊

船舶バラスト水の処理

2020年3月27日
神戸大学 海事科学部

 船舶、特に貨物船では積載貨物の量により浮き沈みの度合い(喫水)が変わり安定した航行ができなくなります。そこで、船舶にはバラストタンクと呼ばれる空間が用意されており、積載貨物が少ないとき、そこに海水を取り込んで喫水を調節します。これを船舶バラスト水と言います。1980年代から、バラスト水やバラストタンク内の沈殿物に紛れ込んだ水生生物の沿岸生態系への影響が指摘されるようになりました。外来種の流入が固有種の絶滅を招いたり、漁業被害や病気の流行につながる恐れがあるためです(図1)。国連の専門機関の一つである国際海事機関(IMO)で議論が進み、「バラスト水管理条約」が2004年に採択され、各国での批准を経て2017年に発効しました。日本も2014年に締結済みです。条約では50μm以上の生物、10〜50μmの生物、細菌類に分けてバラスト水排水基準が定められており、2024年までに現存船も含めて対応する必要があります。

図1:バラスト水による外来種の流入図1:バラスト水による外来種の流入

 バラスト水の浄化のため、フィルタリング、UV照射、化学薬品、電気分解等いくつかの手法が考案され、実用化されています。フィルタリングは船内に取り込んだ海水をフィルターを用いて濾過する方法です。簡単で有効な方法ですが、50μm以下の生物は通り抜けてしまいます。また、フィルターの洗浄や交換が必要だという問題もあります。UV照射は紫外線により殺菌する方法です。細菌にも有効ですが、紫外線が水中で急速に減衰するため大型の装置が作りにくい問題があります。化学薬品は次亜塩素酸ナトリウム等の薬剤で殺菌する方法です。プールの消毒などにも用いられる方法ですが、薬品を含む海水をそのまま排出できないので中和する必要があります。電気分解は海水の電気分解により次亜塩素酸ナトリウムを生成する方法です。その他にもいくつか手法がありますが、それぞれ一長一短があり、実際には複数の方法を組み合わせて使われることが多いようです。設置可能な装置のサイズ、運用コスト、船体へのダメージなどの問題もあります。

 神戸大学海事科学部では既存のシステムの欠点を補うため、マイクロバブルを利用する方法や電磁力を利用する方法など、新しい仕組みでバラスト水を処理するシステムの研究開発を進めています。図2に電磁力を利用したバラスト水処理システムの数値シミュレーション結果を示します。ダクトを流れる海水に磁場をかけ電流を流すことで、電磁力により生物を分離しようというシステムです。

図2:電磁力による生物分離装置の数値シミュレーション。(A) 電位と電流、(B) 海水の流れと圧力分布、(c) 分離の様子図2:電磁力による生物分離装置の数値シミュレーション。
(A) 電位と電流、(B) 海水の流れと圧力分布、(c) 分離の様子
※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

関連記事

2018-03-30

Pict-Labo

アルミニウム製品素材への電磁力付与技術

富山大学工学部

2019-10-25

生レポート!大学教授の声

分野と階層を超えて飛躍知を目指す

京都工芸繊維大学工芸科学部

2009-10-01

環境への取り組み

シップリサイクルシステムの構築

室蘭工業大学理工学部

2014-09-16

生レポート!大学教授の声

ものづくり と 後片付け

神戸大学海事科学部

2020-01-31

なんでも探検隊

カシューナッツの殻が地球を救う!~環境調和型グリーンプラスチック~

東京農工大学工学部

2017-01-13

おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

踊る紙コップを作ろう

香川大学創造工学部

神戸大学
海事科学部

  • グローバル輸送科学科
  • 海洋安全システム科学科
  • マリンエンジニアリング学科

学校記事一覧

なんでも探検隊
バックナンバー

このサイトは、国立大学56工学系学部長会議が運営しています。
(>>会員用ページ)
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。
これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。