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農業の競争力強化とAI

2020年2月21日
宇都宮大学 工学部

 次世代の農業のありかたとして、省力化・自動化だけではなく、スマートフードチェインが重要になります。
図1に示すように、AIとデータ連携基盤の上にスマートフードチェインを構築することで、高付加価値化、フードロスの低減、食品の安心安全の実現が期待されます。

図1:農業のSociety5.0図1:農業のSociety5.0
出典:農業・食品産業におけるSociety5.0
実現に向けた農研機構の改革(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)

 私達は、放牧を活用した乳製品高品質化による酪農産業の競争力強化に関する研究を行っていますが、最終的には、高品質乳から、高品質バター・チーズ、洋菓子、レストランの食材という付加価値向上チェインを実現すして、栃木県を訪れる人に、栃木でなければ味わえない最高の料理、お菓子を提供することで、観光の活性化も実現したいと考えています。

 特に、この研究開発では、AIにより放牧中のウシの行動や採草量を把握するアルゴリズムを開発し、ミルクの高品質化の指標をウシの行動から予測するAIを構築することで、手間がかかるミルクの分析なしに、高精度にミルクの品質予測を可能とすることを目指しています。
図2に、本研究開発の概要図を示します。

図2:研究開発の概要図2:研究開発の概要

 付加価値の高いミルクを生産するための放牧を効率よく実施するためには、以下の3つの課題があります。

  1. 放牧中のウシの摂食行動をリアルタイムに24時間把握すること:これにより、ウシが食べる草の種類と量を推定するとともに、運動量を推定でき、ミルクの生産量と品質の手がかりを得ることが可能となる。
  2. 放牧中のウシの健康状態(第1胃のPh値)をリアルタイムに24時間把握すること:これにより、ウシの健康状態を知ることが可能となり、ひいては、ミルクの生産量と品質の手がかりを得ることが可能となる。
  3. ミルクの品質と牛の摂食行動や健康状態の関連性の解明:これにより、ミルクの高品質化のためのアクションを計画的に実施することが可能となる

 2019年度は、放牧中のウシの摂食行動をリアルタイムに24時間把握するため、GPSで測位した牛の行動をLPWAを利用して牛舎のサーバに送信、蓄積する装置を開発しました。(図3)

 2020年度は、放牧中のウシの第1胃のPh値をリアルタイムに24時間把握するセンサの開発と、収集したデータとその日に測定したミルクの品質の関連性を学習することで、摂食行動データやPh値から、ミルクの品質を推定可能とするAIを構築する予定です。

図3:LoRa受信機(左)と送信機(右)図3:LoRa受信機(左)と送信機(右)
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