量子コンピューターとは、「量子力学の原理」を用いた、 まったく新しい仕組みによるコンピューターです。
これまでのコンピューターでは数百億年以上といった莫 大な計算時間を必要とするようなある種の問題(大きな数の因数分解など)を、わずか数時間で解ける可能性があることを、1994年にShor博士によって理論的に示されています。
「量子力学の原理」には、「確率波」や状態の「重ね合わせ」といった、マクロの世界の日常生活では経験することのない概念が含まれています。
以下、図1で説明します。
古典コンピューターでは、迷路(与えられた問題)を、ねずみが試行錯誤しながら、ゴール(問題の解)を見つけます。実際に現在のコンピューターで、大きな数X の素因数を探すには、X÷2、X÷3、X÷5、X÷7・・・というように、順次違う素数(違う経路)を試すことによって求めます。
量子コンピューターでは、迷路の経路の分岐点で、ねずみは“分身”してそれぞれが別々の経路を試します。
最終的には、ゴールに到達したねずみの経路のみを抽出することによって正しい経路を見つけます。
この“分身”状態が、量子力学の「重ね合わせ」状態に相当します。量子コンピューターでは、「重ね合わせ」状態を利用し、超並列計算によって超高速計算を行います。
この「量子力学の原理」を用いた計算手順は、「Shorの量子計算アルゴリズム」と呼ばれています。
古典コンピューターでは、0と1の値のみ(2進法)を保持する「ビット」と呼ばれるものを使って、プログラムを実行したり、計算をします。 量子コンピュータを実現させるためには、0と1の「重ね合わせ」状態を保持できる「量子ビット」が必要になります。この「量子ビット」は、上述の“分身”のできるねずみに相当します。
現在、「量子ビット」の候補としては、光子の偏光、電子のエネルギー順位、電子スピンなど様々なものが考えられていますが、原子核スピンは有力な候補となっています。
その理由は、原子核スピンの「重ね合わせ」状態が比較 的長い時間保持されることにあります。水の中の水素原子核の場合、数秒程度保持されますが、固体中の電子スピンに比べると、100万倍以上長い時間になります。
この「スピン」とは、電子、陽子、中性子などの基本粒子が持つ物理量で、原子核も全体として「スピン」を持ちます。「スピン」を持つ粒子は、磁気モーメントを持つ(磁石になる)ことが分かっています。この磁気モーメントのつくる磁場を観測することによって、原子核から情報を取り出すことが出来ます。
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