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環境への取り組み

環境にやさしい連続液-液抽出装置(HIMEカラム)の開発

四国地区

2023年11月2日
四国地区

愛媛大学 大学院理工学研究科
山下 浩 准教授

送液以外の動力がいらない?

 HIME(Hi throughput Immobility type Extraction)カラムは、水溶液中の金属イオン(例:Mo、Ni、希土類金属など)を選択的に抽出する方法として、水溶液と油を混合接触させ目標とする金属イオンを選択的に抽出することができる連続液-液抽出装置です。添加物量とpH調整により例えばMoを95%以上の高回収率で抽出可能です。

 すなわち、粒状物質を塔内に充填し、その充填塔内を水と油が対向して流れるという極めてシンプルな構造です(図1)。その充填塔中では、水もしくは油の液滴が充填物の間隙をアメーバ状に、絶えず界面を更新しながら形状を変え、充填塔の隙間を流れていきます。ミキサー・セトラーや往復動式抽出塔などの従来法は、互いに交じり合わない水と油との2液相の液-液界面を多数創出するためにスクリューを高速回転させたり、多数の多孔板を上下に振動させたりするための大きな動力を必要とします。そのため、激しく油水を衝突させ攪拌するとエマルジョン(図2)が発生しますが、本方法では静的に攪拌するため、エマルジョンが発生しない点に特徴があります(図3)。したがって従来法に比べ非常に効率よく抽出が行えます。

どれくらい抽出されますか?

 水相には市販のレアアース標準液を用い、各レアアース濃度を1ppmに調整したものを用いました。油相にはケロシンを用い、25 mLに対してビス(2-エチルヘキシル)リン酸(DEHPA)0.1 gを溶解させたものを用いました。塔上部からDEHPAを溶解させたケロシンを60 mL/minで供給し、同時に塔底部から向流で水相を30 mL/minで供給しました。また、塔頂部の抽出試料液流入口にも内部充填塔を設置し、細粒状の液滴を流下させました。これらの条件で抽出した結果を図4(縦軸は対数表記)に示しています。縦軸は、抽出平衡に達したときの分配比((油相中の元素濃度)/(水相中の元素濃度))です。分配比が100ということは、抽出率が99%であることを意味します。

 塔長を180 cmにすることによって、往復動式抽出塔と遜色ない分離効率が得られることを明らかとしました。さらには往復動式抽出塔を用いる際、乳化させないために液流量、振とう速度、有機溶媒の粘性等種々のパラメーターを振っていかなければなりませんが、HIMEカラムは、静的な場を利用するのみなので、これらの労力を省くことができます。

どういう活用法がありますか?

 HIMEカラムで抽出可能な物質は、液体中にイオンの状態で存在する物質であれば容易に抽出可能です。また、塔の高さを高くすることにより、抽出効率は向上します。高さに制限を受ける場合には、多段式(図5)にすることで容易にできます。さらに、圧力損失が非常に小さいため、大容量の液体を処理する際は、カラム径を大きくすることだけ(図6)で大量処理が可能となります。

 実用化の応用例としては、HIMEカラムを複数本用い、その中に充填する球体の表面性質を変えることにより、A、B混合溶液から、まずAのみを抽出し、続いてBを抽出することが、ワンライン(図7)で可能となります。また装置構成がシンプルであるので、既存の工程の途中に組み込むことも可能です。

 このように、HIMEカラムを用いることにより、高効率、低コストにターゲット元素を抽出することが可能となります。

図1 HIMEカラム模式図(特許第6058789号)図1 HIMEカラム模式図(特許第6058789号)
図2 往復動式抽出塔におけるエマルジョン相の状態図図2 往復動式抽出塔における
エマルジョン相の状態図
図3 HIMEカラムの塔底部油-水相界面の様子 HIMEカラムではエマルジョン(乳化)が発生しない図3 HIMEカラムの塔底部油-水相界面の様子
HIMEカラムではエマルジョン(乳化)が発生しない
図4 HIMEカラムの塔長を変えた場合のレアアースメタルの溶媒抽出試験結果図4 HIMEカラムの塔長を変えた場合のレアアースメタルの溶媒抽出試験結果
図5 実用化の基本仕様図5 実用化の基本仕様
図6 大容量化図6 大容量化
図7 実用化の応用例図7 実用化の応用例
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