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環境への取り組み

フロンガスの分子変換技術

東海地区

2023年3月17日
東海地区

名古屋工業大学 工学部

HFCとは

 HFC(ハイドロフルオロカーボン)は代替フロンの一つです。フロン(特定フロンと呼ばれる)は、冷媒や機械洗浄液として20世紀に世界的に流通しましたが、オゾンホール形成の原因であることが判明したため使用が禁止され、その代替としてHFCが開発されました。HFCは、オゾン層を破壊しないため、広く使われるようになりましたが、後に地球温暖化を引き起こす温室効果ガスであることがわかりました。そのため、2016年10月のモントリオール議定書第28回締約国会議で採択されたキガリ改正において、今後2036年までにHFCの使用を段階的に削減していくことが決定されています。

 これまでに製造されたHFCは大量に貯蔵されており、今後、順次、産業廃棄物として焼却処理していく必要があります。しかしながら、HFC焼却には、多大なエネルギーを必要とし、同時に二酸化炭素も放出するため、その処分はあまり進んでいません。近年では不法に大気放出されることが懸念されるようになってきました。そこで名古屋工業大学大学院工学研究科工学専攻(生命・応用化学領域)の柴田研究室では、HFCを、私たちの生活に不可欠な有機フッ素化合物に変換する手法の開発研究を開始しました。

HFCを有機フッ素化合物へ

 有機フッ素化合物は耐薬品性や撥水發油性をもつため、身近な製品に使用されています。例えば、フライパンなどのテフロン加工製品、スマートフォンの液晶や釣り糸など様々な製品に有機フッ素化合物が含まれています。また、医薬品や農薬にもおいても、有機フッ素化合物は重要な役割を担っています。最近5年間で承認された医薬品の40%近く、市販農薬の70%程度が有機フッ素化合物です。

 HFCは、構成する炭素の数によっていくつかの種類があります。私たちは、炭素数一つのHFC-23 (フルオロホルム、化学構造式HCF3) や炭素数2つのHFC-125 (ペンタフルオロエタン、化学構造式HC2F5) を有用な有機フッ素化合物に変換する手法の開発に取り組んでいます。この研究課題には多くの化学者が参入していますが、HFCから脱プロトン化反応で発生させたフルオロアルキルアニオンが不安定であるため、有機化学反応に用いることは簡単ではありませんでした(図1A)。そこで私たちは、カリウム塩基を用いて、温度や添加剤をうまく組み合わせることで、HFCを有機合成反応に利用できることを見出しました(図1B、C)。

図1 HFCを有機合成反応に用いるための課題(A)と解決策(B、 C)図1 HFCを有機合成反応に用いるための課題(A)と解決策(B、 C)

HFCを用いたフロー型反応の開発

 HFCの工業的利用法の開発を目指して、フロー合成法へ応用を行いました。フロー合成とは管状の流路に試薬や溶媒を流して反応を行う手法のことです。連続運転することで大量合成が可能になるだけでなく、生産性がよい手法と言われています。そのため、上記で開発した手法をフロー合成法に応用することができれば、より工業的な手法に近づけます。私たちは3成分混ミキサーを用いることで、HFCを瞬時に有用な有機フッ素化合物に変換することに成功しました。例えば、ケトン、アルデヒド、カルコン類に対して反応させると、HFC125では、ペンタフルオロエチルアルコール類が、HFC23ではトリフルオロメチルアルコール類が良好な収率で得られます。また、エステル類に対しては、フルオロアルキルケトン類が合成出来ます(図2)。医薬品や農薬としての活用が期待される付加価値の高いフルオロアルキルアルコール類やフルオロアルキルケトン類も本手法にて瞬時に合成することが出来ます。今後、様々な分野でのさらなる展開が期待されます。

図2 HFCを用いたフルオロアルキルアルコール類やケトン類のフロー合成図2 HFCを用いたフルオロアルキルアルコール類やケトン類のフロー合成
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