2020年8月7日
関西地区
京都工芸繊維大学 工芸科学部
電子システム工学課程
多数の電子はエネルギーを運びます、少数の電子は情報の処理と伝達を担います。多数の電子と少数の電子を別々の素子で上手に融合した「電力ルータ」と言う装置を実現すると、自ら使うエネルギーを太陽光パネル等の自然再生エネルギー源でつくり、余ったエネルギーを畜電池に蓄え、ネットワークで足りない人に自由に配れます。このエネルギーを自由に融通し合う機能をもつ「電力ルータ 」の研究開発を進めています。
家電製品、冷暖房機器、調理器具、照明、更に、これらを制御するコンピュータも、電気エネルギーで動いています。これから、電気自動車やロボットの普及で、ますます電気エネルギーの需要は増すと予測されており、安全に、柔軟に、高効率にエネルギー供給できる低コスト技術が求められています。また、地球温暖化防止のためには、石油やガスなどの化石燃料を使わずに発電する太陽光や風力など再生可能エネルギー源を大量に導入する必要もあります。加えて、災害の多い日本では、災害時に電気が止まっても、一般の人が安全に短時間に電気の復旧・復興ができるようなシステムが求められています。
これらの課題に応えるため研究開発を進めているのが「電力ルータ」という装置です。例えば、一家に一台、電力ルータと蓄電池を設置し、各家庭と発電機や大型太陽光パネルを持つ事業者や自治体とをネットワークでつなぎ、双方向で安定的に電気を融通し合うことができれば、課題解決への大きな一歩となります。
また、災害で自宅が停電した時、「電力ルータ」を介して隣の家から余っている電力を分けてもらえるようになります。今後、普及する電気自動車が搭載している蓄電池と接続すると、3人家庭であれば、3日間程度の電力消費を賄えます。太陽電池などの再生可能エネルギー源も「電力ルータ」により蓄電池と組み合わせてネットワーク化すれば大量導入可能です。つまり、地産地消型で、災害に強い自律型の電力ネットワークが実現できるのです。京都の開発型ベンチャー企業と海外の電力供給サービス企業と連携して研究開発を進めています。
地球上には電気エネルギーの需要が高まる先進国がある一方で、約14億人の暮らす地域では、今もって電気が使えません。現在、研究開発中の日本の一般家庭で使える「電力ルータ」は、これらの発展途上国でも使える技術となり、再生可能エネルギー源で発電した電気エネルギーをシェアするシステムが実現されるしょう。使用者自身でメンテナンスできる電力融通システムを低コストで提供することが可能になります。ドイツのアーヘン工科大学や米国のバージニア工科大学でも、こうした研究開発が行われています。
掲載大学 学部 |
京都工芸繊維大学 工芸科学部 | 京都工芸繊維大学 工芸科学部のページへ>> |
私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |