2017年8月10日
関西地区
和歌山大学 システム工学部
これからのエンジニアは自然や他者への配慮をこれまで以上に求められます。それには、自然や人の本質的な理解を基礎として、常に自然と人、人と人の結びつきを想起し、それらのよりよい関係を具現化する技術が必要です。そんな技術開発に向けた研究のいくつかを紹介します。
避難シミュレーション分析
紀伊半島の沿岸部では、地震津波などの災害リスクに加え、人口減少と超高齢化が大きな課題です。 これまでの農山漁村計画は、農林漁業の機械化に加え、いかにして人を呼び戻すか、スポーツ施設などの建物を増やしてきました。これ以上建物を建てても、地域の重荷になるだけではないか、と思われる地域が出始めています。もちろん、建物を増やすことだけが、建築や環境のデザインでありません。使い続けることや、減らしていくこともデザインの重要な手法のひとつです。
和歌山県・紀美野町では、「空き家」と「伝統的民家」を調べています。「空き家」が多すぎるのは問題ですが、すべて撤去して無くせば良い、というものではありません。撤去するもの、しないものを、判別していくことが重要です。そのための調査を行い、良い民家には、都会からのIターン移住者に移り住んでもらっています。 和歌山県・由良町では、「事前復興計画」に取り組んでいます。南海トラフの地震に襲われた後ではなく、事前に復興のことまで考えておく、という計画です。海抜の低い場所に立つ住宅は住み継がず、安全な場所に立つ住宅を使いづけていけば、うまく計画が建てられますが、「空き家」は避難路を塞ぐ厄介者でもあります。避難シミュレーションを使って、空き家の除却がどのような影響をもたらすかなどの研究を下敷きに、計画を考えています。
アジア地域では歴史的にみても、都市に農地が混在することで都市住民は様々な効用を享受してきました。多くの地域で、集落と後背農地の間には、生物資源の循環を通じた相互依存の関係がありました。都市と農地の混在の効用を最大化し、生じる環境問題を最小化するような、都市農村融合戦略が求められています。
本研究では、和歌山・阪南、バンコク、マニラ、天津など、成長段階の異なるアジア各都市の郊外地域を対象とし、以下4点の課題に取り組んでいます。
平成23年の東日本大震災と紀伊半島大水害はこれまでの災害対策を根本から見直すきっかけになりました。つまり、これからの災害への対応は想定外の事態が起こりうることを想定したものでなければなりません。また、災害対応をより実効あるものとするためには、ハード対策とソフト対策を有機的に結び付けることが重要です。そこで、学内外の専門家20名以上で文理融合型のプロジェクトチームを作り、山間部が多く海岸線が長い紀伊半島に適した防災技術の開発や災害に強いまちづくりに関する研究を行っています。このプロジェクトチームには環境システム学科から多数の教員が参加しており、現在は平成23年9月に紀伊半島に甚大な被害をもたらした台風12号豪雨災害を中心に、災害メカニズム解明と被害低減策の検討、災害時要援護者支援対策、応急仮設住宅の住環境改善、災害廃棄物対策など幅広い研究を行っています。
和歌山は、再生可能エネルギーの供給を含めて、生態系が私たちに供給するサービスが豊かな地域です。この生態系サービスの質を高めるためには、人間が賢く生態系とつきあい、支えながら、生態系が生み出す恵みを地域に巡らせることが重要です。そのための技術や社会のしくみを作り出すところに、科学的な貢献が求められています。例えば、
といった先導的な取り組みによる温室効果ガスの削減効果や事業化可能性を分析して、「環境と経済の好循環」の効果の評価に取り組んでいます。
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私たちが考える未来/地球を救う科学技術の定義 | 現在、環境問題や枯渇資源問題など、さまざまな問題に直面しています。 これまでもわたしたちの生活を身近に支えてきた”工学” が、これから直面する問題を解決するために重要な役割を担っていると考えます。 |