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生レポート!大学教授の声

流れの計算科学

2018年1月26日
岡山大学 環境理工学部 環境数理学科
石原 卓
生レポート!大学教授の声

 私たちのまわりには多様な流れがあります。星雲中の星の誕生、原始惑星系円盤ガス中の微惑星形成、太陽フレア、大気と海洋の気象現象、積乱雲中の雨滴成長過程、汚染物質や微粒子の拡散、車や航空機などの乗り物の空力や騒音、内燃機関における燃焼、ファンの騒音、呼吸や血流、細胞内の流れなど、宇宙スケールから身近なスケール、ミクロなスケールに至るまで、様々な現象で流れが重要な役割を果たしています。したがって、これらの流動現象の解明のためには流れの性質を正しく理解することが必要です。

 流れは流体の質量、運動量やエネルギーの保存則に従い、決定論的方程式(ナヴィエ-ストークス方程式)によって記述されます。しかし、方程式が非線形なため解析的扱いが著しく困難であり、解の存在と滑らかさは未解決問題です。一方、数値流体力学は、その発展の中でナヴィエ-ストークス方程式を高精度・高解像度に数値積分することで多くの流動現象がシミュレートできることを示してきました。流れの非線形性の強さは代表速度とスケール、流体の動粘性係数を用いた無次元パラメータRe(レイノルズ数)で表されます。Reの値の増加に伴い、流れは乱れて複雑さを増し、Reの値の大きい流れは乱流となります。従来、数値流体力学の方法で解析できる流れは低Reのものに限られていました。しかし、近年のスーパーコンピュータの著しい発達により、比較的高Reの乱流がナヴィエ-ストークス方程式の直接的な数値シミュレーションによって解析できるようになり、乱流の統計的性質や流れ構造の多くが明らかになりつつあります。

 流れの計算科学は数値流体力学とハイパフォーマンス・コンピューティングを駆使した数値シミュレーションにより、関心のある流動現象を解明していく、新しい科学です。流れの計算科学では実験で測定できない量の測定や実験では設定できない条件を課した数値実験により、非線形で複雑な流動現象の理解を進めることができます。宇宙・地球スケールの流れやエネルギーや環境問題と関係する流れの多くは非線形性が強く、大小の渦のスケール比が巨大なため、近い将来のスーパーコンピュータを駆使しても系全体の直接的なシミュレーションは不可能です。しかし、大規模な数値シミュレーションの「上手な活用」により、現象解明や問題解決につながる重要なヒントが得られます。私は、数理物理学と情報科学を駆使して、流れの計算科学の方法を開拓し、未解決の現象解明やエネルギーや環境問題の解決に結びつくような研究と教育を実践し、社会に貢献していきたいと考えています。

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