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生レポート!大学教授の声

 

電気エネルギー供給の一翼を担う風力発電

 
2013年12月13日
北見工業大学
電気電子工学科電気機械研究室
田村淳二

電気エネルギー供給の一翼を担う風力発電

地球温暖化問題などの背景の下、世界的に再生可能エネルギーに対する期待が高まっており、特に我が国においては東日本大震災に伴う原子力発電所停止問題の影響も加わり、太陽光発電や風力発電が益々注目され、その導入が進められている。

風力発電に目を向けると、世界の導入量は2012年現在で2億8000万kWを超えており、これは我が国における全発電設備容量の1.3倍程度に相当する。一方、我が国における風力発電導入量は2012年末で約260万kWであり、世界第13位である。導入が進んでいる欧米においては、総じて地形的に平坦で、かつ年間を通して一定風速の風が得られる風力発電適地が多い。これに対して我が国では、山間部が多くて平坦地が少なく、また台風などの影響もあり、風力発電にあまり適しているとは言えない。このような中でも、北海道、東北、九州などを中心として風力発電の導入が進められている。

陸上における風力発電適地が少ない中で、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心とした国家的プロジェクトとして、大規模オフショア風力発電の研究が進められている。我が国は陸地面積はあまり大きくはないものの、周りを海に囲まれ、世界第6位の排他的経済水域面積を有しており、この点に着目して海上に風車を設置するオフショア(洋上)風力発電が期待されている。しかしながら、世界第1位のオフショア風力発電導入量を誇るイギリスにおいては遠浅の海が広大に広がっているのに対し、我が国を囲む海は水深が深く、風車基礎を海底に設置することは困難である。これに対して、NEDOプロジェクトで検討されている方式は浮体式と言われる風車を海に浮かべる方式であり、世界的に研究はされているものの、まだ商業的に成功した国はない。日本は、船舶、建築、発電設備などで世界的にもトップクラスの技術を有しており、これらを結集しての挑戦である。来年には世界最大級の単機7000kW出力の風車の導入・試練も予定されており、これらの研究が順調に進めば、近い将来に福島県沖に世界初・世界最大級の浮体式オフショア風力発電所が完成するかもしれない。これは国を挙げての壮大な挑戦であり、是非この夢のようなプロジェクトを引き継いで、次の新たな挑戦へチャレンジしてくれるような多くの学生諸君が現れることを期待したい。

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