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写真や絵画の中の水を動かす技術

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Pict-Labo~写真と動画で科学をのぞく~

高温溶融金属のながれの制御

2017年11月17日|琉球大学 工学部

我々の身の回りにある、建物や橋梁等の多くの金属構造物、車、電車やほぼすべての家電製品の製造において、物と物をつなぎ合わせる接合技術は必要不可欠です。金属同士をつなげる接合法の中で、産業界で最も使用されているのがアーク溶接です。ところで、なるべく安く製品を作るためには、高速で高効率な溶接(接合)が必要となります。そこで、我々は磁場を溶融池内に流れる電流に対して付加し、フレミングの左手の法則に基づき発生する電磁力を用いて溶融金属の流動を制御することにより、高効率溶接を目指しています。

図2 PIV解析結果

(a) 磁場を付加した場合

(a) 磁場を付加した場合

(b) ECMP溶接

(b) ECMP溶接

 アーク溶接とは、金属材料と電極(トーチ)との間にアーク(雷のようなもの)を発生させ金属を溶融し、二つの金属をつなげる溶接法です。アーク溶接において、高効率に溶接するために入熱を大きくした場合、溶融金属が重力の影響で大きく垂れ下がります。この重力による、溶融金属の垂れ下がりにより、(形状)欠陥が発生しやすくなり、溶接品質や溶接効率の低下の主な原因となります。これに対し、我々は溶融池内に流れる電流に対し、外部より電磁石を用いて磁場を付与し、電流と磁場の相互作用で溶融池内に反重力方向の電磁力を発生させ、溶融金属の流れとビード形状を制御する溶融池磁気制御溶接法(ECMP法)を提案しています。

 図1の動画は通常の下向のTIG溶接の場合、加熱したワイヤーを挿入した場合および磁場を付加したECMP溶接の場合の溶融池の変化の様子を示しています。図右側の薄く白い箇所がアークであり、横に拡がる楕円形の光沢面が溶融池です。通常アークの強い光のために溶融池(溶けた金属)を観測することは不可能ですが、強いレーザー光源とアークの強い光エネルギーを通さないバンドパスフィルタの組み合わせにより、溶融池の流れの変化の様子が詳細に観測することができます。動画を再生したらよくわかるように、溶接中にもかかわらず、アークがほぼ見えない状態となっており、溶融池の流れの様子が詳細に観察できます。図1より、溶融池表面は重力および上部より挿入したワイヤの影響により溶融池表面が下がってる様子が見られるが、磁場を付加した場合、溶融池内に働く上向の電磁力により溶融池表面が上昇している様子が見られます。また溶融池表面の流れを定量的に解析するために、溶融池にトレーサー粒子を混入させPIV解析を行ってます。

 図2(a)および(b)に外部磁場を付加した場合とECMP溶接の場合のPIV解析結果の一部を示しています。磁場のみを付加した場合、溶融池後方(図左方向)への強い流れが見られます。ECMP溶接の場合は挿入したワイヤ後方に、二つの大きな後流渦が見られます。PIV解析結果より磁場が溶融池の流れにおよぼす影響が明らかにされつつあります。

 これらの結果より、まだメカニズム等多くの検証は必要ではありますが、電磁力を用いた溶融金属の流動制御の有効性は明らかです。なお、本手法の一部は既にLNGタンクの横向、立向姿勢等の厚板多層溶接等に実用化されています。

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