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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

微生物が燃料を作る微生物燃料電池!

2018年10月12日
広島大学 工学部

はじめに

 酸化還元反応を利用する簡単な電池にボルタ電池(図1)があります。ボルタ電池はアノード電極(マイナス)である亜鉛が解ける反応(Zn→Zn2++2e-)で作られた電子(e-)が、カソード電極(プラス)に使用した銅の表面で水素イオンが電子を受け取る反応(2H+ +2e-→H2)が同時に起こることで電子が流れます。「亜鉛が解けて電子を失う酸化反応」と「水素イオンが電子を受け取る還元反応」の各々の反応が起こる標準電極電位の差が起電圧になります。亜鉛が解ける酸化反応の標準電極電位は-0.736 V、水素イオンが電子を受け取る還元反応の標準電極電位は0 Vなので、起電圧は0 – (-0.736)=0.736 Vになります。

図1図1

 水素を燃料にして走る究極のエコカーと言われている燃料電池自動車の動力である燃料電池(図2)も酸化還元反応を利用する電池です。微生物燃料電池は微生物が作った水素を燃料とする燃料電池ですから、究極を超えるエコ電池と言えます。燃料電池ではアノード電極で水素から電子を作り(H2→H++2e-)、カソード電極で空気から取り入れたO2が電子を消費して(O2+4H++4e-→2H2O)、電子が流れます。燃料電池ではO2+4H++4e-→2H2OとH2→2H++2e-の各々標準電位1.229V、0Vの差が起電圧で1.229Vです。

図2図2

しくみ

 ここでは川や海岸にたまったヘドロと言われる腐った有機物をたくさん含んだ泥を燃料にする微生物燃料電池の仕組みを説明します。有機物が腐って(分解して)いく過程では微生物が餌である有機物を消化してエネルギーを得ています。例えばブドウ糖(C6H12O6)を微生物が分解する反応はC6H12O6+6H2O→6CO2+24H++24e-です。

微生物が有機物を分解して水素イオンと電子を排出する消化は、燃料電池で水素を分解して水素イオンと電子を作る反応と同じです。

 水素イオンは水素イオンとして水中に存在できますが、電子は電子単体で存在できないため微生物は電子を渡す相手(メディエイター)が必要になります。メディエイターは電子を受け取ると還元体、電子を渡すと酸化体に変わる物質です。メディエイターは電子をもらったり、あげたりして電子を伝達する役割をします。酸素がある場では微生物は酸化体である酸素に電子を渡します(O2+4e-+4H+→2H2O)。酸素が電子をもらうと還元体である水に変わります。酸素が電子をもらう過程が生物の呼吸と同じです。すなわち微生物燃料電池のしくみは生物が生きるしくみと同じなのです。余裕のある人は「電子伝達系」を調べてみて下さい。

 泥の中には酸素がないため、酸素を必要としない嫌気性微生分が活動しています。嫌気性微生物は電子を泥の中にある二価鉄などの酸化体に渡すため、酸化体が還元化されて泥の中は還元体でいっぱいになります。二価鉄は電子をもらうと還元体である三価鉄になります。還元体がいっぱいになっていく過程を泥のヘドロ化と言っています。

 微生物燃料電池は図に示すように泥の中に埋めたアノード電極(マイナス)が微生物の排出した電子を受け取って、カソード電極(プラス)で酸素に電子を渡すことで電子が流れます。微生物燃料電池は泥の中から電子を回収するので還元物質は酸化物になっていきます。酸化物が多くなった泥のヘドロ化は解消されていきます。微生物燃料電池は発電しながら泥を浄化していくことができます。

 微生物燃料電池の燃料には下水のような有機部物たっぷりの汚泥が適していますが、衛生的に良くないので水底にある泥を利用して泥を燃料とする微生物燃料電池を作ります。

用意するもの

  • カーボンクロス(3cm×3cm、2枚1セット)
  • 水底泥(田んぼの深い層にある酸素に触れていない泥を使用)
  • ニッケル線(10cm、15cm各1本ずつ1セット)、ワニ口(線付きクリップ)
  • テスター(電流、電圧が測定できるもの、ホームセンターで購入できる)
  • 透明な容器(市販の透明なプラスチック容器(500mL程度)ペットボトルを切っても使えます)
  • ダイオード(赤色)
  • サランラップ(1cm²程度の切れ込みを入れる)
  • ロックタイ(サイズ幅2.5mm、長さ100mm)
  • ニッパー、ペンチ
  • ビニール手袋、マスク
  • ネット(カーボンクロスを固定できるもの、4枚1セット)

SMFCの作成

手順1.電極部(アノード電極、カソード電極)の作成

 電極作成のための準備物(カーボンクロス2枚、ニッケル線2本、ロックタイ8本、ネット4枚)

  1. カーボンクロスにネットをはさみ、ロックタイで固定する。

  2. ロックタイの切れ端をニッパーで切り落とし、またカーボンクロスのはみ出た部分をはさみで切り落とす.

  3. カーボンクロスにニッケル線を巻き付ける。

  4. 完成(2組で1セット、ニッケル線が長い方がAnode電極になる。)

手順2.アノード層の作成とカソード電極の準備

注意点
  • 実験する際は、硫化水素等の有害な気体が発生する恐れがあるため、出来るだけ外で実験を行うこと
  • 泥を触るときは、ビニール手袋、マスクを着用すること
  • 長時間の実験は避け、適度の休憩をとること

 透明な容器に約200mLのよくかき混ぜた泥(なるべく空気を混入させないこと)に詰める(容器の1/3程度まで)。容器内部に泥が付着した場合は、ティッシュ等を用いてふき取っておく。泥の中にアノード電極を埋め込み、その後泥の表面に切れ込みを入れたサランラップをかぶせる。カソード電極は水道水とともに容器に入れる。新しい電極は電位が安定しないので、約1~2日程そのままの状態で保存する。

手順3.SMFCの完成

 容器に水道水(300mL程度)を注ぎ込み、その後容器に電極(Cathode)を固定させる。水道水を注ぐ際は泥が巻き上がらないように注意する。

実験手順

  1. 実験① 起電圧の測定
    微生物燃料電池の電圧(カソード電極電位とアノード電極電位の電位差)をテスターとワニ口を用いて、測定する。テスターの抵抗を変えて電圧の変化(抵抗値と電圧の関係)をプロットしてみる。乾電池と微生物燃料電池の違いがわかります。

  2. 実験② 直列接続して高い電圧を得る
    直列つなぎにすると、どれほどの電圧を得ることができるのか実験してみよう。各々の微生物燃料電池の電圧のたし算になっているか確かめてみよう。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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