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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

身の回りのこんなものが光るの???

2018年1月12日
岡山大学環境理工学部 環境物質工学科

下村脩先生は、緑色に光る蛍光タンパク質をオワンクラゲの中から発見、単離し、ノーベル化学賞を受賞しました。こうした蛍光物質は細胞の可視化といった医療やバイオの分野から、消費電力の少ないELディスプレーなど様々な分野で応用されています。蛍光物質と聞くと、人間が合成した特殊な物質で毒々しい様に感じますが、実は私たちの身の回りには、沢山の蛍光物質があふれており、私たちの知らないところで蛍光物質を使った技術が使われています。

実験その1 身の回りの蛍光物質を探してみよう。

用意するもの

ブラックライト

・ ブラックライト(LED型のペンライトやLEDの電灯でも可)
本実験では写真で示すLED型の電灯を用いました。

注意点

光源を直接見ないようにしましょう。

  1. バナナや果物
    暗所でバナナをブラックライトで照らすと、黒い点(シュガースポット)のまわりが光ります。バナナは熟すタイミング(蛍光を観察しやすいタイミング)が難しいですが、ミカンなどの柑橘類(少し腐りかけ)は著しく光ります。

  2. 蜂蜜
    蜂蜜には様々なフラボノイドが含まれています。それらが淡青色に光っていると考えられます。

  3. パイン飴やドロップ、エナジードリンク
    黄緑蛍光を発するビタミンB2(リボフラミン)という物質が含まれているため光ります。グミキャンディーなども光るので観察にオススメです。ソルティーライチやトニックウォーターも青白く光りますが、用いられている香料が蛍光物質の様です。

  4. 豆類
    ピーナッツなどの豆類やクルミなどの木の実も光ります。写真では柿の種のピーナッツが青白く光っているのがわかります。

身の回りの蛍光物質

実験その2
ブロッコリーから異なる蛍光色の成分を分離・抽出してみよう

野菜にも発光物質が含まれています。そのままブラックライトをあてても光る様子を観察できますが、ここではブロッコリーに含まれている異なる蛍光物質を水とエタノールで抽出し、蛍光色の違いを見てみましょう。

用意するもの

  • ブラックライト(LED型のペンライトでも可)
  • ガーゼ
  • ガラス製の容器
  • 水道水、エタノール(焼酎などのアルコール成分の多いお酒でもよい)
  • 電子レンジ
  • ブロッコリー(少量)
  1. 2つの容器に、ブロッコリーの花蕾(目安として1 cm×1 cm×1 cmくらいの大きさ、エタノールの方は少量にし、水の方は少し多めの方が好ましい)をとり、入れる。
  2. 1つは電子レンジを用いて加熱し(500Wで20秒くらい)、柔らかさになったら、細かくくだき、お湯を3mLほど加える。10分ほど放置した後、ガーゼでプロッコリーをこしとり、溶液をガラス製の容器に集める。(細かく砕き、水を加え、コンロで煮込んでもよい)
  3. もう1つは、加熱をせずにエタノール(焼酎などのアルコール飲料でもよい)を10mLほど加える。緑色の成分(葉緑体)がでてきたら、ガーゼでプロッコリーをこしとり、溶液をガラス製の容器に集める。
  4. 水で抽出した溶液とエタノールで抽出した溶液を、それぞれブラックライトで照らし、蛍光を観察する。
水で抽出したもの水で抽出したもの
エタノールで抽出したものエタノールで抽出したもの

エタノールを用いた場合、葉緑体に含まれているクロロフィルが主に抽出されており、クロロフィルが赤色に発光します。一方、水の場合には、クロロフィルは抽出されず、他の蛍光物質が抽出されていることがわかります。

ここまでの実験で、蛍光物質=有害ではなく、普通に食べているものに蛍光物質が含まれており、私たちの身の回りには多くの蛍光物質があることがわかります。この他にも色々と調べると、思いもしないものが光るかもしれませんね。

実験その3 身の回りの蛍光を利用した人間の知恵を探してみよう。

次に、私たちの身近で知らない間に使われている蛍光物質を利用した技術を探してみましょう。

  1. 合成石鹸
    合成洗剤を水に溶かし、ブラックライトを照らすと、青白く光ります。洗剤に含まれる蛍光剤が、目に見えない紫外線を吸収して、目に見える青白い光を放出するため、衣類の見た目の白さを増す効果があります。実は、木綿や麻などの繊維は、不純物の影響で、生成色(淡い灰色がかった黄褐色)をしています。真っ白な新品の木綿や麻などの衣料の多くは、製造段階で蛍光剤が使われています。しかし、衣類に含まれていた蛍光剤は、洗濯を繰り返すと序々に落ちてしまうので、見た目の白さが失われてしまいます。そのため、もとの白さを保つために、洗剤には蛍光剤が使われています。

  2. ハガキ

    使用済のハガキ
    住所が書かれている面をブラックライトで照らすとピンク色のバーコードが浮かび上がります。これは区分機で郵便物に記載された郵便番号や住所を表すバーコードで、無色透明な蛍光物質のインクで印字されています。

  3. 紙幣
    紙幣には透かしやマイクロ文字、ホログラムなど、偽造防止技術のために色々な技術が使われていますが、蛍光インクを用いた印刷もされています。日本の紙幣では赤いハンコの部分が光ります。日本だけでなく、海外の紙幣でも蛍光剤が使われているものがあるようです。

  4. パスポート

    パスポート
    海外旅行に行ったことがある方は入国審査の様子を思い出してみてください。入国審査官はパスポートにライトを照らして一生懸命に何かをみていませんか?私たちは気がつかないのですが、入国審査官は驚くべきものを見ています。
    実は偽造防止のためにこんな技術が使われています。パスポートの発行に時間がかかりますよね。パスポートは発行されるまでに時間がかかるのか疑問でしたが、この微細な細工技術に気が付くと、時間がかかるのも納得です。

最後に

私達の身の周りにある「分子」は、とても小さいものですが、その一つ一つが、エネルギー変換装置として働くことができるすごい力を持っています。教科書にマークするだけで、勉強した気分を味わうことのできる魔法のペン(蛍光ペン)は、紫外光の光エネルギーを吸収して可視光の光を放出しています。分子の形を工夫することで、いろいろな色の光を放出するように微調整することができるところが、分子装置の魅力です。英語の資料ですが、蛍光ペンのインクの分子構造が”The chemisty of highlighter colours“として紹介されているので、一度チェックしてみてください。

ここで紹介されている分子は、「光エネルギー → 光エネルギー」のエネルギー変換装置ということができます。紫外光のような短い波長(=高エネルギー)の光エネルギーを、それよりも長い波長(=低エネルギー)の光エネルギーに変換する、波長変換装置ということもできます。また、分子の構造に注目すると、ベンゼン環(芳香族環)が沢山入っています。なぜ、芳香族化合物が蛍光ペンに使われるのか?あるいは、分子の形と蛍光とはどういう相関があるのか?は、大学で勉強するとバッチリわかります。それがわかれば、皆さんは、「光エネルギー変換分子装置の設計と制作」を自在にできる技術を手に入れることができるのです。また、皆さんが、岡山大学環境理工学部環境物質工学科に進学すると、座学のほかに、学生実験で、以下のような実験をエンジョイできます!

  1. コーヒーからカフェインを取り出そう!
  2. カフェインを原料にして蛍光分子を合成しよう!(化学発光に使える蛍光分子の合成)
  3. 合成した分子を蛍光剤にした化学発光

2017年オープンキャンパスで本実験を実施した際の様子

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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