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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

仕事をする風船!?

2017年4月7日
福井大学 工学部 応用物理学科 分子科学講座

1.はじめに

 皆さん、風船というと何を思い浮かべるでしょうか?空に飛んでいくヘリウム入り風船。膨らませて遊ぶ風船。空気を入れてふくらませる風船。いろいろなものを思い浮かべるでしょう。また、動物や花をつくるクラフト風船もありますね。でも、風船はもっと面白い性質を持っているのです。 その不思議な性質を大学の物理系学科の「熱力学」の授業でも使っています。

2.実験してみましょう

2.1 細長風船を引っ張ると?

 動物や花を作るのに使うクラフト風船。細長い風船です。

 100均でも買えるし、おもちゃ屋でも売っています。まず、これを買ってきてくださいね! そしたら、まず簡単な実験からはじめてみましょう。両手の人差し指と親指で、細長風船の3センチメートルくらい離れた2箇所をつまみます。つまんだら、急激に引っ張って伸ばします。伸ばしたら、すぐに下くちびるの下のところにあててみましょう。どうなるでしょうか?どうなるか予想してからやってみましょう。

 次に、細長風船をゆっくり引き伸ばして10数えてから、急に引っ張るのをやめてもとの長さにもどします。もどったら、すぐに下くちびるの下のところにあててみましょう。

 どうなったでしょうか?

【答えとその理屈はここをクリックして見てくださいね!】

用意するもの

細長風船(ペンシルバルーンという商品名で売っています。)

2.2 おもりを吊るした細長風船にお湯をかけると?

図1

図1のように、水をいっぱいに入れた500 mLのペットボトルに細長風船の片方の端を結び、三脚のネジのところで風船のもう片方の端を結んで吊るします。

ペットボトルのおもりの下には、かけたお湯をうけるためにバケツを置きます。

吊るして、しばらくは風船が少しずつ伸びていきます。伸び切ったら、風船の上の方から風船を伝わるようにお湯をかけてみましょう。どうなるでしょうか?

【答えとその理屈はここをクリックしてみてね!!】

用意するもの:

  • 細長風船
  • 水を満たした500 mLのペットボトル(おもりとして使用)
  • スタンド(高さ1 m程度)または三脚
  • 熱湯
  • 取手付きポリビーカー(湯を注ぐためのもの)または細口ヤカン
  • ポリバケツまたは2 L程度のポリビーカーなど(お湯を受けるもの)

3. 実験結果とその理由

3.1 風船を引っ張ると

【実験結果】

 両手の人差し指と親指で、細長風船の3センチメートルくらい離れた2箇所をつまみます。

 細長風船を急に引っ張って、すぐに下くちびるの下にあててみましょう。そうすると、熱く感じます。

 つぎに、ゆっくり引っ張って、10数えてから力を緩めて自然な長さに急に戻して、すぐに下くちびるの下につけると冷たく感じます。

 これが、実験結果です。それでは、どうしてそうなるのでしょうか。

【実験結果の理屈】
図2図2

 風船は、天然ゴムでできています。ゴムは高分子という、鎖のように細長くて、フニャフニャ動くことができるものからできています。専門用語では、このような長くて動くことのできる高分子を「高分子鎖(こうぶんしさ)」とよびます。このような鎖のような細くて長い高分子は、ちょうど、元気のよい子どもたちが手を離さないで暴れまわっているようなものです(図2)。このような、「お手々をつないだ小さなあばれんぼう」が網目のようにつながっているのです。「小さなあばれんぼう」は、温度が高くなるほど元気がよくなります。ここで、元気がよくなるというのは、より速く動き回ることです。逆に元気がよくなると、温度があがるのです。

 風船を外から引っ張ると引っ張った勢いで、ゴムの中の「小さなあばれんぼう」の元気がよくなるのです。手で力を加えて風船を引っ張っています。このように力をかけてものを動かしたり、変形したりすることを「仕事をする」といいます。言い換えると、風船に対して「仕事をする」ことによって、中のゴムの網目を作っている小さなあばれんぼうの元気がよくなり、温度が上がるのです。

 逆に、引っ張っておいた風船を急にもとに戻すと、風船は「外に対して仕事をする」ことになります。外に対して仕事をした分、「小さなあばれんぼう」は少し元気がなくなります。その分、温度がさがります。そのため、引っ張っておいて急に縮ませた風船は冷たくなるのです。

【実験にもどる】

3.2 おもりを下げた風船にお湯をかけると

図3図3
【実験結果】

 おもりを吊るした風船にお湯をかけると図3のように風船が縮んで持ち上がります。私たちの身の回りのものの多くは温度が高くなると、伸びます。ですから、お湯をかけるとものが持ち上がることは、とても不思議に感じるかもしれません。

【実験結果の理屈】
プラスチックの鎖を使った模擬実験(シミュレーション)

 この仕組も、3.1で述べた風船を急に引っ張った時に温度があがる現象と同じように、ゴムの中の「小さなあばれんぼう」のはたらきで説明することができます。

 風船の中の「お手々をつないだ小さなあばれんぼう」は、温度が高くなると激しく動くようになります。これを実感するために、プラスチックの鎖を使った模擬実験(シミュレーション)で確かめてみましょう。1メートルくらいの長さに切ったプラスチックの鎖の片方の端を持って、垂らします。片方を図のように水平方向に15 cm程度の幅で横(水平方向)に激しく揺さぶります。そうすると、プラスチックの鎖の下の端が持ち上がります。このプラスチックの鎖を「高分子鎖」だと思ってください。温度があがると、高分子鎖はより激しく動き回るようになります。そのために、引っ張る力が強くなって、おもりが持ち上がるのです。

 図4はお湯をかけると、ゴムの網目を作っている「お手々をつないだ小さなあばれんぼう」の元気がよくなって、おもりを持ち上げる仕組みを書いたものです。お湯をかけることによって、おもりを持ち上げるという「仕事」をするのです。これが、「仕事をする風船」の正体です。

図4図4
【おもりを吊るした風船にお湯をかける実験にもどる】

4. おわりに

 風船だけを使った実験を紹介しました。いかがでした?風船というありふれたものでも、不思議な現象があるのです。

 身の回りのものを使って、面白い実験をたくさんすることができます。

http://polymer.apphy.u-fukui.ac.jp/~kuzuu/

 に身近なものごとに関して、簡単にできる実験やその仕組を紹介しています。ぜひ見てくださいね。
(「教育関係」「教員免許状更新講習」のところを見てください)

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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