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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

超伝導体による永久磁石の浮上

2017年2月17日
九州工業大学大学院情報工学研究院 電子情報工学研究系
(九州工業大学情報工学部 電子情報工学科)

浮上の原理

液体窒素で-196℃まで冷却した超伝導体の上に永久磁石が浮上している様子はあちこちで見られるようになったので、ご存じかも知れません。

多くの説明では超伝導体の完全反磁性である「マイスナー効果」により磁石は浮上し、超伝導体に侵入している磁束線を固定する「ピン止め効果」により磁石は固定されると説明されています。しかしマイスナー効果はごく小さい磁界以下でしか実現できないです。(下部臨界磁界Bc1が77.3Kでは数10mT程度で、永久磁石の数100-1000mTに比べて、はるかに小さい。)

以下の動画の様子をピン止め効果によって説明しましょう。

ピン止め効果

動画を観る前にピン止め効果の説明をしましょう。

ピン止め効果とは、超伝導体が磁束線の動きを妨げる働きです。

  1. 磁束線が超伝導体に入ろうとすると、入るのを妨げます。
  2. また一度入った磁束線は超伝導体から出にくくなります。
  3. ピン止め効果は超伝導体が冷却されていないと発生しません。

つまり室温では、磁束線の動きが妨げられることはないです。

不安定だけれども、高い位置での浮上(ゼロ磁界冷却)

不安定だけれども、高い位置での浮上(ゼロ磁界冷却)

この動画では、超伝導体を室温から液体窒素温度(-196℃)まで液体窒素を使って冷却して超伝導状態にしたのちに、永久磁石をゆっくりと近づけています。永久磁石が近づくにつれて、反発する力を感じます。これが「マイスナー効果」と説明されることが多いですが、実際には「ピン止め効果」により反発します。つまり、磁束線が超伝導体に入りそうになると、磁束線の侵入をピン止め効果により妨ぎます。これにより磁石は反発するように感じます。次に反発力に打ち勝って、磁石をさらに超伝導体に近づけると、磁束線の一部がピン止め力を越えて超伝導体内に侵入します。一度侵入した磁束線はピン止め効果によって固定されます。手を離すと、動画のように空中で浮くことになります。磁石に回転対称性があれば、回転させることもできます。

高い位置に浮上させることはできますが、この浮上はあまり強くピン止めされていないので、ちょっとした力で永久磁石は超伝導体から外れます。この冷却の方法をゼロ磁界冷却と呼びます。

安定だけれども、低い位置での浮上(磁界中冷却)

安定だけれども、低い位置での浮上(磁界中冷却)

次の動画では次の様に着磁します。超伝導体が室温にあり超伝導状態でないときに、磁石を立てて固定しておきます。このときピン止め効果は発揮されないので、磁石の磁束線はそのまま超伝導体に侵入しています。その後に液体窒素を使って冷却します。超伝導状態となり、ピン止め効果が発揮されて磁束線は超伝導体内で強く固定されます。磁石はそのままの位置で空中に浮上します。

もしマイスナー効果が発揮されるのであれば、冷却後に超伝導状態になると磁石ははじき飛ばされるはずです。しかしそうはなりません。マイスナー効果はかなり小さな磁界でなければ発揮されません。マイスナー効果は今回の永久磁石の磁界で壊されてしまいます。

この浮上では磁束は強くピン止めされているので、強い力で永久磁石は超伝導体はくっついています。この冷却の方法を磁界中冷却と呼びます。

超伝導体の下につり下がる磁石(磁界中冷却)

超伝導体の下につり下がる磁石(磁界中冷却)

最後につり下がる磁石を説明します。カップ麺の容器の中には超伝導体があり、その下で磁石がくるくると回ります。

まず、机に磁石を置きます。そしてカップ麺の容器を乗せます。さらに超伝導体を室温にしておき、カップ麺容器の底に入れます。この状態で、磁石の磁束線は超伝導体を貫いています。ここで、超伝導体を液体窒素により冷却します。十分に時間をかけて冷却すると、ピン止め効果により磁束線は超伝導体内に固定されます。こうして永久磁石は超伝導体の下に固定されます。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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