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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

 

ニワトリの胚を観察しよう

 
2014年3月25日
岩手大学 工学部

はじめに

ニワトリ胚(ニワトリの赤ちゃん)は、他の脊椎動物(背骨のある動物)の胚(はい)に比べて大きく、また体外で発生するためさまざまな実験操作を行いやすい、安価かつ入手が容易である、進化的にわれわれ哺乳類と同じ羊膜類(ようまくるい)に属するので体のつくりや仕組みが似ている、などという利点があるので、基礎分野の研究から遺伝子工学、インフルエンザワクチン作製など幅広い生命科学分野のモデル動物として良く用いられています。
このページでは、一般家庭や学校でニワトリの有精卵から胚を育てる方法を述べます。

用意するもの

ニワトリ有精卵(受精卵)
注:無精卵では胚は発生しません。
大型スーパーや有機野菜を扱っているスーパーで売っていることがあります。また、通販でも購入可能です。
なお、雌鶏からタマゴが産まれた時点で、受精してから約1日経っています。

有精卵を保温庫で並べるためのケース
タマゴを購入したときについてくるものを使用します。

発泡スチロール片
タマゴ置き作製用。

小型ハサミ
先の尖ったものが良い。赤ちゃん用爪切りも可。

縫い針

カッターナイフ

透明幅広テープ
薄い方が使い勝手がよい。 例:住友3M透明梱包テープ軽量物用Scotch 309

保温庫
温度可変のもの。 例:APIXポータブル保冷温庫ACW-650
食品や飲料を保温するための家庭用のもので十分です。通販だと1万円未満で入手可能です。

保湿のための水を入れるための小型の容器

あれば便利

温度計 最高温度、最低温度を自動的に記録できるデジタル温度計が便利。
通販だと2千円以下で入手可能です。

デコカッター

学校などで本格的に取り組みたいとき

実体顕微鏡

注射器と注射針

生理食塩水

墨汁

  • 実験する前に、発生させた胚を観察したあとどうするか、良く考えておきましょう。もし孵化(ふか)させるのであれば、ヒヨコ・ニワトリを飼うスペースが必要です(孵化には約3週間かかります)。もし、途中で胚を処分するのであれば、どの段階で観察を終えるか決めておきましょう。図10~11を見れば分かりますが、2日目ぐらいになると血流が見え始めます。それ以前だと罪悪感は少ないでしょうが、顕微鏡を使用しないと胚はよく見えません。これらを考えると、孵卵(ふらん)開始3日ぐらいで観察を終えるのが無難でしょう。なお、初期胚(孵化までの期間のおおよそ半分、すなわち10日頃まで)だと神経系が未発達で胚は苦痛を感じないので、特に安楽死の処置を執る必要は無いとされています。
  • 食中毒になるといけないので、観察に使用したタマゴは食べないで下さい。

準備1:タマゴ置きの作製

図1

有精卵を置くための台を作製します。カッターナイフ(デコカッターであれば更に加工がしやすい)を使って、7cm x 5cm の大きさに発泡スチロールを四角く切ります。次に、タマゴが安定して乗るように指で発泡スチロールを削って、凹みをつくります(図1)。

準備2:保温庫の温度変化のチェック(オプション)

家庭用保温庫の温度設定の値は結構いいかげんです。そこで最高温度、最低温度を自動的に記録できる温度計で、ある温度設定にしたとき、実際にはどのくらいの温度になるかを確認しておくと、ニワトリ胚の発生率が上がります。ニワトリ胚の発生に適した温度は38~39℃です。ちなみに前述したACW-650の場合、42℃に設定すると、実際の温度が38℃前後になりました。

孵卵開始

あらかじめ温めておいた保温庫にタマゴをケースに並べて入れます。また、小型の容器に水を入れ、保温庫に入れます。孵卵中に水が少なくなってきたら、適宜足します。

1日目

孵卵開始から丸1日経ったら、胚を観察してみましょう。まず、図2に記した位置に小孔(しょうこう)を縫い針で開けます(図3~4)。小孔が開いたら、孔が下になるようにして、白身を数ミリリットル取り除きます(白身を抜かないと、次のステップで黄身が壊れてしまい、胚を観察できません)。

図2 図3 図4

次に小型のハサミを使って図4~図5で示すぐらいの穴を開けます。すると黄身の上部に白っぽい部分(その真ん中付近は透明に近い)が見えます(図6)。その透明な付近に胚がいるのですが、この時期には肉眼ではほとんど確認できません。

図4 図5 図6

観察が終わったら、乾燥を防ぐため、透明テープで穴を塞ぎます(図7~8)。このとき、穴より大きめに透明テープを切り取り、更に別の透明テープの切れ端を穴と同じぐらいの大きさの円形に切り、それらを互いに貼り合わせます(図7)。これを用いて穴を塞ぎます(図8)。こうすると、このあとテープをはがさなくても胚をクリアに観察することができます。

図7 図8

■発展

もし、実験設備が整っている場合は、まず生理食塩水に墨汁を少し添加したものを注射器に入れ、実体顕微鏡下で、その注射器につけた注射針を白っぽい部分の外側の黄身から胚の方向に刺し、生理食塩水+墨汁を注入すると胚が浮かび上がって見えます(図9、1日半孵卵した胚を顕微鏡を通して写真を撮ったもの)。なお、1日半より前の段階で生理食塩水+墨汁を注入すると、発生率がかなり下がります。

図9

2日目

2日目胚の周りをよく見ると、円形に赤い部分が見えます(図10)。この部分は血島(けっとう)と呼ばれる胚外の組織で、赤血球やその前駆体がここで作られ、後に胚の体の中に移動します。観察しにくい場合、テープをハサミで切ると見やすくなります。観察し終わったら、また図7のようなテープを作製して穴を塞ぎます。

図10 図7

3日目

3日目になると血管系が発達し、何もしなくても胚の形が良く分かるようになってきます(図11)。
よく見ると肢芽(しが:生えかけの翼や脚)も見えるかもしれません。

図11

3日目胚の構造

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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