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おもしろ科学実験室(工学のふしぎな世界)

 

音声の不思議を分析してみよう

 
2013年12月26日
琉球大学 工学部 情報工学科
教授 高良富夫


音声分析のためのフリーソフトAudacityを使って音声の分析実験をしてみよう。
まずはこの記事で体験してみてください。

まず音の波形を切り取って聞いてみよう。ちょっと変わった体験をしますよ。

促音(そくおん)「っ」を分析してみよう

下の図は、「言った」と発音したときの波形をAudacityで分析したものです。
横軸は時間で、時間は左から右へ流れます。

  • この音を聞いてみましょう。
    下のボタンをクリックしてみてください。

    「いった」と聞こえますね。

  • では、「いった」の「い」の部分を左の図のようにポインタをドラッグして選択して聞くとどのような音が聞こえるでしょうか。下のような音が聞こえます。

    「い」と聞こえますね。

  • 次に、「た」の部分を聞いてみましょう。

  • 最後に「っ」の部分聞いてみましょう。

    あれ!「っ」の音がありませんね。

そうなのです。「っ」の音は、促音(そくおん)と呼ばれ、私たちには詰まった感じを持たせる音ですが、言語的にあるはずの所に物理的には存在しないのです。
それでは、「っ」は、いったいどこにあるのでしょう?!「い」の音をもう一度聞いてみてください。「いっ」と聞こえませんか。どうも「い」のどこかにあるようです。「っ」は、不思議な音ですね。

沖縄の方言の「っ」で始まる不思議なことば

これに似ていますが、沖縄の方言にはさらに不思議な音があります。なんと「っやー」(君と言う意味)や
「っわー」(豚)という単語があるのです。発音できますか。驚いたとき「うわー」と言いますね。そのとき「っわー」と発音していませんか。

「シーサー」を分析してみよう

次に沖縄の家の屋根にある魔よけの獅子人形「シーサー」の発音を例にして子音の不思議を調べてみましょう。

  • 左の図は、「シーサー」と発音したときの波形です。

    まず、「シー」の部分を選択して聞いてみましょう。

    「シー」と聞こえますね。

  • 次にsの部分を少し短くして聞いてみましょう。

    「ちー」と聞こえませんか。

  • さらにsの部分を短くしてみましょう。

    「てぃー」と聞こえませんか。

  • さらに短くしてみましょう。

    「でぃー」と聞こえませんか。

どうしてこのように聞こえるのでしょうか。なお「シーサー」は沖縄だけにある獅子人形ですが、「シー」の音は全国のどこにでもあります。

「ちー」は発音記号では[tʃii]と書きます。ここには「しー」[ʃii]と「てぃー」[tii]があります。上に実験で「ちー」の子音部の長さは「しー」と「てぃー」の子音部の長さの中間でしたね。tとʃの順序は逆ですが、これでtʃに聞こえるのです。

スペクトル分析をしてみよう

次にスペクトル分析の実験です。周波数スペクトルとは、音の各周波数成分の強さを並べたものです。上の「シーサー」の音声をAudacityで周波数スペクトル分析して右に示します。この図で横軸は時間(左から右へ流れます)、縦軸は周波数(下から上へ高い周波数)です。このように、時間軸と周波数軸で音の成分の強さを表したものをスペクトログラフと言います。これは、時には「声紋」と呼ばれることもあります。声の指紋という意味ですね。

「シーサー」の音声の[saa]の部分の分析をしてみましょう。まず母音[aa]の部分を選択し、上の「解析(A)」のボタンを押し、その中の「スペクトラム表示」を選択します。すると右図のようになります。左側の小さな四角に現れたのが右側で選択した部分の周波数スペクトルです。この図の横軸は周波数で縦軸は各周波数成分の強さです。このように母音のスペクトルは飛び飛びの等間隔の周波数の成分からできていることが分かります。

次に[saa]の子音[s]の部分の分析をします。sの部分を選択し、同様にスペクトル表示をすると左の図のようになります。今度は、等間隔の周波数成分ではありません。このように摩擦音sは雑音と同じ性質を持っています。

世界にひとつしかない音を分析してみよう

最後に、世界にひとつしかない音のスペクトログラフをお見せしましょう。この音は下に示しますように、

「あい」(愛)という音ですが、そのスペクトル分析をすると右図のようになります。この図の中央部にハートの形を横にしたものが見えますね。実は、スペクトログラムがこのようになるように処理して合成した音声なのです。自然界にはこのような音声はありませんので、これは世界でただひとつハートのこもった音声ということになります。

フリー・ソフトウエアAudacityについて

以上の分析は、上に述べましたように、フリーのソフトウエアであるAudacityを使って確かめることができます。AudacityはWebで検索して、すぐダウンロードできますが、ダウンロードは学校の先生と一緒に行ってください。

自動作曲・合成歌声による「工学部長挨拶の歌」

音を扱うフリーソフトのように、音の処理ができるWebサイトもあります。東京大学の研究室では作曲ができ、合成音声がそれを歌うサイトを提供していますので、私はそれを使って「工学部長挨拶の歌」を作ってみました。現在、工学部長でもある私が日ごろ口癖にしていることを歌にしてしまいました。これをこの記事の結びの挨拶とします。歌詞を見ながら聞いてください。

工学部長挨拶の歌

タカラ・トミーを 作

大学は、研究をする教育機関です
これが大学の特長です
研究は、人類の知識の限界を
打ち破ります

工学は、身の周りの全ての人工的に
造られた物を研究します
したがって、工学は人工科学
という意味です

琉球大学工学部は、このような工学を
世界的なレベルで教育します
高度な専門知識と豊かな創造力を
身に着けさせます

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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