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なんでも探検隊

 

バイオエタノールを推進薬に用いた
ロケットエンジン材料の適合性について

 
2013年9月6日
室蘭工業大学 工学部

はじめに

航空宇宙機システム研究センターでは十勝や苫小牧製のバイオエタノール(BE)を燃料とする超音速ジェットエンジンやロケットエンジンの基礎研究開発を行っています。
通常、エンジンから炭酸ガスなどが排出されますが、BEは植物由来でカーボンニュートラルなので、植物に吸収され環境に優しいクリーン燃料です。BE関連の燃焼特性把握やエンジン材料に及ぼす影響などの解明をめざし、本学白老エンジン実験場で燃焼や材料適合性実験を外部機関と共同研究などで行っています。以下に研究概要を紹介します。

燃焼試験

図1にロケットエンジン概略図を示しました。液体酸素(LOX)/BEを混合燃焼させ推力を発生する主燃焼器やタービン駆動ガスを発生するガスジェネレーター(GG)について約3000K、5.5MPaの燃焼実験を実施しました。図2に白老エンジン実験場での燃焼状況を示しました。世界的に開発実績の少ないLOX/BE着火特性や混合特性など重要データを取得をしています。

図1 バイオエタノールロケットエンジンの概略図

図1 バイオエタノール
ロケットエンジンの概略図

図2 バイオエタノールエンジン燃焼試験(白老エンジン実験場 (株)IHI/IHI エアロスペースとの共同研究)

図2 バイオエタノールエンジン燃焼試験
(白老エンジン実験場 (株)IHI/IHI エアロスペースとの共同研究)

エンジン材料の適合性

金属材料(Cu、 Ni、 Alなどの合金)は燃焼室、推進薬タンク、配管などに使用され、高分子材料(樹脂、ゴムなど)はOリング、バルブシートなどに用いられます。

金属材料の適合性向上

アルミニウム合金(A6061)は、高温、高圧下(400 [K]、5 [MPaG])では深刻な影響を受け(図3)使用できません。

図3 アルミニウム合金(A6061)の市販エタノールによる腐食(EA 400[K],5[MPaG] JAXAとの共同研究)試験前

試験前

図3 アルミニウム合金(A6061)の市販エタノールによる腐食(EA 400[K],5[MPaG] JAXAとの共同研究)試験後

試験後

図3 アルミニウム合金(A6061)の市販エタノールによる腐食
(EA 400[K],5[MPaG] 
JAXAとの共同研究)

表面にニッケルメッキ処理し、図4に高温、高圧下(400 [K]、 10 [MPaG])でBEに曝した場合の写真を示しますが、腐食は起こりません。

図4 ニッケルメッキ処理によるアルミニウム合金(A6061)の防食効果(BE 400K,10MpaG JAXAとの共同研究)試験前

試験前

図4 ニッケルメッキ処理によるアルミニウム合金(A6061)の防食効果(BE 400K,10MpaG JAXAとの共同研究)試験後

試験後

図4 ニッケルメッキ処理によるアルミニウム合金(A6061)の防食効果
(BE 400K,10MpaG 
JAXAとの共同研究)

また、図5のようにアルマイト処理し高温、高圧下(523 [K]、10 [MPaG])での結果も適合性があります。

図5 アルミニウム合金(A6061)のアルマイト処理による防食効果(BE 523 [K], 10[MPaG] JAXAとの共同研究)試験前

試験前

図5 アルミニウム合金(A6061)のアルマイト処理による防食効果(BE 523 [K], 10[MPaG] JAXAとの共同研究)試験後

試験後

図5 アルミニウム合金(A6061)のアルマイト処理による防食効果
(BE 523 [K], 10[MPaG] 
JAXAとの共同研究)

高分子材料の適合性向上

図6にエポキシ系CFRP材料を高温、高圧のBEに曝した時の変化を示しました。高温、高圧(523 [K]、 10 [MPaG])に曝されると積層構造が破壊されます。

図6 バイオエタノールによるエポキシ樹脂(CFRP)の層構造破壊(523 [K], 10 [MPaG] JAXAとの共同研究)試験前

試験前

図6 バイオエタノールによるエポキシ樹脂(CFRP)の層構造破壊(523 [K], 10 [MPaG] JAXAとの共同研究)試験後

試験後

図6 バイオエタノールによるエポキシ樹脂(CFRP)の層構造破壊
(523 [K], 10 [MPaG] 
JAXAとの共同研究)

図7のようにニッケルメッキ処理し高温、高圧に曝した場合、変化せず適合性を示しました。

図7 バイオエタノールに対するCFRPのニッケルメッキ処理効果(BE 523 [K], 10 [MPaG] JAXAとの共同研究)試験前

試験前

図7 バイオエタノールに対するCFRPのニッケルメッキ処理効果(BE 523 [K], 10 [MPaG] JAXAとの共同研究)試験後

試験後

図7 バイオエタノールに対するCFRPのニッケルメッキ処理効果
(BE 523 [K], 10 [MPaG] 
JAXAとの共同研究)

おわりに

金属(アルミニウム合金)および高分子材料(CFRP)はBEに対し高温、高圧下で適合性を有さないが、ニッケルメッキまたはアルマイト処理により優れた適合性を発揮することが明らかになった。

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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