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21世紀型林産工業の創生 ~木質ナノカーボン~

 
2013年3月19日
和歌山大学 システム工学部 精密物質学科

1.はじめに

ナノテクノロジーは次世代産業の中核技術として開発が勧められています。カーボンナノチューブ、グラフェンなどのナノカーボンはナノテクノロジーを活用した次世代高度産業におけるキーマテリアルとして注目されている素材です。ナノカーボンは、通常、高純度の石油系グラファイトを原料として製造されています。しかし、地球温暖化の問題、3.11後のエネルギー問題により、石油などの化石原料に頼らない、カーボンニュートラルな製造方法の確立が求められています。

木材は身近にある炭素資源であると同時に、持続可能な資源でもあります。木材は、古くから活用されてきた素材ですが、これまでの主たる利用は薪や炭などのエネルギー源、構造材料あるいは紙としての利用に限られています。貿易の自由化により安価な輸入木材が市場に出回ったこともあり、国産木材の経済的な地位は急激に落ち込んでしまっています。国内の林産業の低迷は、国内の森林を荒廃(こうはい)させ、森林の重要な役割である環境保全能力を損なう結果を招いています。木質資源を有効活用することは、林業を活性化し、森林を再生するためにも不可欠な技術です。

木の国(紀国)和歌山に位置する和歌山大学では、県土の77%を占める森林を活用し、環境保全機能を正常化するために、木材資源の有効活用法として、木材からナノカーボンを作製する研究をシステム工学部精密物質学科で進めています。

図1 アセチレンの重合とポリアセチレンの構造

2.木質資源のカーボンナノチューブ化

木質資源のナノカーボン化には二つの方法があります。炭素純度の高い紀州備長炭を電極として用いたアーク放電による方法と、木材をバイオエタノール化して化学気相堆積法によるナノカーボン作製の原料とする方法です。双方の方法について研究は進められていますが、ここでは、紀州備長炭からカーボンナノチューブを作製する方法について紹介します。

備長炭は、ウバメガシを高温で焼成した炭で、白炭の一種です。紀州備長炭は、炭素濃度が高く、かつ良好な電気伝導性をもつことが特長です。この紀州備長炭を電極にして、アーク放電を行うと、グラファイトを用いた場合と同様に良質なカーボンナノチューブが得られます。アーク放電の条件を調整することで、機能性の高い単層カーボンナノチューブや、機械材料としても利用が期待されている多層カーボンナノチューブを得ることができます。実験室での検討の結果、結晶性が高く、耐熱性が高い多層カーボンナノチューブを高収率で得られることがわかりました。さらに研究を進めて木材から安価に多層カーボンナノチューブを得る方法を確立できれば、自動車や航空機の素材として、また最近提唱されている軌道エレベータの材料として用いることができると期待しています。木質材料をナノカーボン化する技術は、資源に乏しい日本にとって、豊かな森林に囲まれているものの産業の遅滞(ちたい)に悩む地方にとっても、新しい産業を興すきっかけになると考え、研究に取り組んでいます。

図6 ポリチオフェン溶液に金属イオンを添加したときの色変化と蛍光発光
図3 導電性ポリピロールの作成実験

電極堆積物の走査電子顕微鏡写真

図3 導電性ポリピロールの作成実験

ラマン散乱測定による、
陰極堆積物を備長炭、
多層ナノチューブとの比較

※このページに含まれる情報は、掲載時点のものになります。

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