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複雑な混相流現象のシミュレーション

 
2011年5月13日
信州大学 工学部 機械システム工学科

1.はじめに

流体力学の研究分野の一つに「混相流現象の解明」というものがあります。混相流とは、複数の相(気相と液相、液相と固相など)が混在した流れのことです。
身近な例では、炭酸飲料など液体中を上昇する気泡は気液混相流、血流や土石流などは液体中を流れる固体(血流の場合には赤血球などが相当)は固液混相流と呼ばれます。
信州大学工学部機械システム工学科研究室では、混相流のための新しい計算手法の開発と、それを用いた数値シミュレーションによって、複雑な混相流現象を解明しようとしています。

2.数値計算例

2.1 気液混相流(固体表面に衝突する液滴の挙動)
図1と図2は、直径2.45mmのグリセリンを速度4.1m/sで水平な固体表面に衝突させる条件でシミュレーションを行った結果です。図1には衝突後のある時刻における液滴形状が再現されています。また、同時刻における液滴中心断面の圧力分布を図2に示しています。赤い部分ほど圧力が高いことを示しており、実験では計測が難しい液滴内部の圧力分布をシミュレーションによって知ることができました。
さらに、固体表面の濡れ性、液滴および周囲気体の物性値、衝突速度、衝突角度などの要因によって液滴の動的挙動や圧力などがどのように変化するのか、このシミュレーションによって再現することができます。

図1 固体壁面に衝突した液滴の形状
図1 固体壁面に衝突した液滴の形状

図2 固体壁面に衝突した液滴内部の圧力分布
図2 固体壁面に衝突した液滴内部の圧力分布

2.2 気液混相流(球状構造をもつ多孔質内の液体浸透現象)
図3は、濡れ性の異なる固体表面を液体が浸透する様子をシミュレーションした結果です。燃料電池のガス拡散層では、数十マイクロメートル程度の繊維状の空隙の中を水などの液体がキャピラリー力(毛細管現象による力)によって移動することが知られています。固体壁面の濡れ性を変化させることによって、移動する液体の量や速度を制御することが可能になると考えられます。
本計算手法は、このようなマイクロスケールの気液混相流にも適用することができ、今後実用面への発展が期待されています。

図3球状固体内における液体の浸透現象(静的接触角は左側領域:68度,右側領域:110度)
図3 球状固体内における
液体の浸透現象
(静的接触角は左側領域:68度,
右側領域:110度)

2.3 固液混相流(血流中における赤血球の挙動)
図4は、管内を列状に流れる赤血球の挙動をシミュレーションした結果です。赤血球は、柔軟に変形する固体であり、本計算結果でも細い血管内でスムーズに流れる現象が再現されています。
このようなシミュレーション結果は、工学のみならず医学をはじめとする幅広い分野における混相流現象の解明に役立つことが期待されています。

図4 管内を列状に流れる赤血球の挙動
図4 管内を列状に流れる
赤血球の挙動

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