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環境への取り組み

 

汚染水中の放射性物質を除去するための吸着繊維の製造と除染現場への適用

 
関東地区 2013年10月16日
関東地区
千葉大学 工学部

2011年3月11日の東日本大震災の後、3か月で千葉大学の研究室で、水中の放射性セシウムCs-137を吸着除去できる繊維の作製レシピを作り上げた。そのレシピを基にして、(株)環境浄化研究所(社長:須郷 高信さん)とサンエス工業(株)(社長:清水 威さん)とで、その除染用吸着繊維を大量製造する装置を完成させた(図1)。除染現場ですぐに使ってもらえるようにしたかったからである。

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図1 吸着繊維『ガガ』の大量製造装置



ゼオライトは海水中でのセシウム選択吸着性は低い。これに対して、アニオン交換基を有するグラフト鎖(接ぎ木した高分子の鎖)をナイロン繊維に付与し、その後、グラフト鎖内に不溶性フェロシアン化コバルトの微結晶を生成させて作製した不溶性フェロシアン化コバルト担持繊維は、海水の混ざった高塩濃度汚染水中の放射性セシウムを吸着除去できる。この吸着繊維の作製経路を図2に示す。吸着繊維は鮮やかな緑色を呈した。その色が、東日本大震災後に日本を訪れ支援を続けている"レディガガ"さんの来日時の髪の色に似ていたので、謝意を込めて吸着繊維『ガガ』と名付けた。吸着繊維を組み紐にして汚染水中に投げ込み、その後、引き揚げるだけで除染ができるので、原発の構内に貯蔵された汚染水タンク中のセシウム濃度を下げるためにも、原発前の港湾内の海水中のセシウム濃度を下げるためにも使用できる。

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図2 不溶性フェロシアン化コバルト担持繊維(吸着繊維『ガガ』)の作製経路



吸着繊維『ガガ』は、高塩濃度汚染水中でもセシウム-137を選択的に捕集できる点だけでなく、高分子の部分(ナイロン繊維とグラフト鎖)を焼却可能である点でも有利である。2013年6月17日に、東京電力福島第一原子力発電所の港湾内(3号機取水口付近)に吸着繊維『ガガ』の組み紐が取り付けられ、セシウムの除去性能の試験が始まっている(図3)。当研究室は、現在、放射性ストロンチウム(Sr-90)を除去するために、チタン酸ナトリウムを担持した吸着繊維の作製を進めている。

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図3 原子力発電所の取水口の海水中に投入した吸着繊維『ガガ』の組み紐



引用文献

  • 斎藤恭一:化学,67 (11):35-37 (2012)
  • 東京電力(株):福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた
    中長期ロードマップ進捗状況(概要版):1-4 (2013)
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